年次有給休暇の買取り

年次有給休暇の買取り

  • 年次有給休暇を買い取っていませんか?
  • 年次有給休暇の買取りは、労働基準法に違反する行為です。

【解説】

労働基準法(第39条第1項)によって、従業員が入社して6ヶ月が経過したときは、会社は10日分の年次有給休暇を付与することが義務付けられています。

そして、従業員が取得日を指定して年次有給休暇を請求したときは、会社は休暇を与えた上で、賃金を支払わないといけません。

仮に、入社して6ヶ月後に付与される10日分の年次有給休暇を、付与と同時に会社が全部を買い取ったとすると、従業員は年次有給休暇を取得できないようになります。

会社は労働基準法で定められている年次有給休暇の利用を拒否することになりますので、結果的に労働基準法違反になります。

労働基準法が改正されて、1年につき5日の年次有給休暇の取得が義務付けられましたが、5日分の年次有給休暇を買い取ったとしても、法律をクリアしたことにはなりません。

従業員本人が買取りを希望したとしても同じです。労働基準法は、労使間の合意とは無関係に強制的に適用されます。

また、そもそも年次有給休暇とは、従業員の心身の疲労を回復して、ゆとりのある生活を保障することを目的とした制度です。年次有給休暇の買取りは、制度の目的にも反します。

したがって、労働基準法に基づいて、年次有給休暇を取得できる状態にしておく必要がありますが、年次有給休暇は翌年度に限って繰り越すことができます。つまり、付与日から2年が経過すると時効によって権利が消滅します。

付与日から2年間は有効ですので、その間は買取りが禁止されます。では、付与日から2年が経過して(翌年度に繰り越して)、未消化で権利が消滅する年次有給休暇を買い取ることも、労働基準法違反になるのでしょうか。

会社において、未消化で消滅する年次有給休暇を買い取ることを前提としていると、年次有給休暇の取得を抑制することに繋がりますので、労働基準法の趣旨に反する行為と考えられています。使い切らなかった年次有給休暇の買取りは、従業員には喜ばれると思いますが、するべきではありません。

しかし、退職に伴って権利が消滅する年次有給休暇については、取得を抑制することには繋がりませんので、買取りは可能です。労働基準法の趣旨に反すると指摘されることもありません。

例えば、会社から従業員に対して退職勧奨をするときに、交渉の材料として年次有給休暇の買取りを条件とすることがあります。

また、従業員は退職日までに年次有給休暇を使い切りたいけれども、会社としては引継ぎをして欲しいといった場合に、出勤してもらう代わりに会社から年次有給休暇の買取りを提案することもあります。

なお、年次有給休暇の買取りは労使間の合意に基づいて行うものですので、買取り金額は自由で、お互いに応じる義務はありません。会社か従業員か、いずれかが拒否をすれば成立しません。

もっと詳しく