東芝柳町工場事件(有期労働契約の更新等)

東芝柳町工場事件 事件の経緯

会社では、従業員を正規従業員と臨時従業員(臨時工)に分けて雇用していました。

会社では臨時工を、景気変動による需給に合わせて雇用量を調整するために、契約期間を2ヶ月間と定めて雇用していました。

臨時工の採用基準、給与体系、労働時間、適用される就業規則等は、正規従業員とは異なる取扱いとなっていて、臨時工は労働組合に加入できず、労働協約の適用もありません。

ただし、従事する仕事の種類や内容は、正規従業員と同じです。

また、臨時工が2ヶ月の契約期間満了で雇止めされたケースはなく、本人の希望で退職したケースを除くと、そのほとんどが長期間にわたって継続雇用されていました。

このように労働契約の更新を繰り返していたのですが、会社は複数の臨時工の更新を拒否して、雇止めを通知しました。雇止めをされた臨時工について、更新の回数は5回から23回(約1年から約4年)に及んでいました。

これに対して臨時工が、雇止め(更新の拒否)は実質的には解雇に当たるけれども、理由のない解雇のため無効であると主張して、労働契約の存在の確認等を求めて、会社を提訴しました。

東芝柳町工場事件 判決の概要

本件の労働契約は、景気変動等によって労働力の余剰が生じない限り、雇用し続けることを予定していたもので、契約期間は一応2ヶ月と定められているが、会社も臨時工も、更新されることを前提として労働契約を締結していたと思われる。

また、契約期間が満了する都度、自動的に労働契約が更新され、実質的に期間の定めのない労働契約と変わらない状態になっていた。

雇止めの意思表示は、このような契約を終了させるのであるから、実質的には解雇の意思表示にあたる。したがって、雇止めの効力の判断をする場合は、解雇に関する法理を類推適用するべきである。

つまり、就業規則に解雇事由が明示されている場合は、解雇は就業規則に基づいて行われる。ただし、形式的に解雇事由に当てはまるとしても、それを理由とする解雇が相当でないときは、解雇はできない。

臨時従業員用の就業規則には解雇事由が列挙されており、契約期間の満了を解雇事由として掲げている。

しかし、実質的には、期間の定めのない労働契約と変わらない状態になっていた。また、臨時工の採用、雇止めの実態、作業内容、会社の言動等を考慮すると、単に契約期間が満了したという理由だけでは雇止めを行わず、臨時工もこのように期待、信頼し、労働契約関係が存続、維持されてきた。

このような場合は、景気変動によって余剰人員が生じる等、会社において従来の取扱いを変更せざるを得ない特段の事情がない限り、契約期間の満了を理由として雇止めをすることは、信義則上から許されない。しかし、その当時は、余剰人員を生じたといった事情はなかった。

また、臨時従業員用の就業規則には他の解雇事由も列挙されているが、これらの事由に該当するような事実も認められない。

以上により、会社が臨時工に対して行った雇止めは無効である。

東芝柳町工場事件 解説

雇用契約書や労働条件通知書で、形式上は契約期間を定めていたけれども、会社も従業員(臨時従業員、パートタイマー、アルバイト、契約社員など)も、特別な事情がなければ自動的に労働契約は更新されると考えていたケースです。

会社から従業員に、継続雇用や正社員への登用を期待させるようなことを言っていると、当然、本人はそのように信じます。また、自動更新にして、契約期間が満了する都度、雇用契約書を作成していないと、会社が「期間を定めて雇用している」と言っても認められません。

そうなると、実質的には期間を定めないで雇用しているものとみなされて、解雇に関する規定が適用されます。そうなると、解雇をする場合は、正当な理由や特別な事情が欠かせません。正当な理由や特別な事情がなければ、雇い止め(解雇)は不可能になります。

雇止め(更新を拒否)するときに、解雇が類推適用されないようにするためには、本人に更新を期待させないことが大事です。

更新しない可能性がある場合は、その判断基準を明確に伝えて、更に、労働契約を更新するときはその都度、雇用契約書(労働条件通知書)を作成し直すことが不可欠です。

労働契約の自動更新は絶対に行ってはいけません。また、更新の有無の判断基準はできるだけ具体的に示して、あらかじめ本人が予測できるような内容が望ましいです。