当て逃げの修理代の費用負担
当て逃げの修理代の費用負担
従業員が会社の自動車を駐車場に駐車している間に当て逃げされました。従業員に自動車の修理代を弁償させることはできますか?
そのような場合は、従業員に自動車の修理代を請求する(弁償させる)ことはできません。
従業員が会社の社有車(社用車)を駐車場に駐車していて、当て逃げされたとすると、自動車の修理代は第一に当て逃げをした加害者が負担するべきです。
しかし、加害者を特定できなければ、車両保険を利用するか、車両保険に加入していなければ、修理代は会社が負担せざるを得ません。
従業員の過失(不注意)が原因で生じた事故ではありませんので、従業員に修理代を請求する(弁償させる)ことはできません。
なお、車両保険を利用する場合は、当て逃げされた現場から警察に連絡をして、交通事故証明書を発行してもらう必要があります。警察への連絡を怠ると、車両保険を請求できないケースがありますので、保険会社に連絡をして、指示を受けて対応するようにしてください。
事前に、当て逃げや自損事故等も含めて、社有車(社用車)で事故が発生した場合の手順について、従業員が適切に対応できるように、指導・教育しておくことが望ましいです。
流れとしては、安全確保が最優先で、負傷者がいれば救急に連絡、可能であれば自動車を路肩等の安全な場所に移動、後続車に注意を促すために発煙筒や反射板を設置することが考えられます。そして、警察、保険会社、勤務先に連絡をします。
また、相手がいる場合に、会社の許可を得ないまま、当事者同士の判断で示談をすることは厳禁です。後になって体調不良や自動車の破損等が明らかになる可能性が双方ともゼロではありません。
そして、当て逃げではなく、従業員の過失(不注意)が原因で、社有車(社用車)の自損事故が発生したとしても、使用者責任や運行供用者責任という考え方がありますので、従業員に修理代の全額を弁償させる(負担させる)ことはできません。
使用者責任については、民法(第715条)によって、「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」と規定されています。
会社が従業員に業務を命じて、その業務に関連して第三者に生じた損害については、会社の責任で賠償しないといけません。
運行供用者責任については、自動車損害賠償保障法(第3条)によって、「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。」と規定されています。
従業員が業務で自動車を運転して、その際に他人に生じた損害については、会社の責任で賠償しないといけません。
事業によって利益を得ているのは会社ですので、事業に関連して生じた損害は、その利益から負担するべきと考えられています。また、社有車(社用車)については、会社は損害保険(車両保険)に加入して損害を分散できますが、従業員はそれができません。
以上のとおり、原則的には会社が負担するべきと考えられていますが、従業員に過失(不注意)があったときは、その一部について、従業員に損害賠償を請求できます。
ただし、請求できる額は、不注意の程度によって、損害額の2〜3割程度が上限と考えられています。従業員が故意に生じさせた損害については、全額の請求が可能です。