求人広告の損害賠償請求

求人広告の損害賠償請求

求人広告を出して従業員を採用しましたが、入社して1週間で退職してしまいました。求人広告に掛かった費用を、その者に請求できますか?

退職者に求人広告の費用を負担させる(請求する)ことはできません。

求人広告を出すかどうか、求人媒体の選定、求人広告の予算等は、会社が決定することです。また、応募者の中から、会社が採用する者を決定します。

従業員(応募者)は、これらの決定に関与していません。経営判断によるものですので、その結果の責任は会社にあります。

また、労働基準法(第16条)によって、「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」と規定されています。

退職した場合に違約金を定めて、求人広告の費用を支払わせることは、この規定に違反すると考えられます。

仮に、直ぐに退職した場合は、従業員に求人広告の費用を請求できるとすると、例えば、100万円の求人広告を出して、退職しようとしている従業員に、「退職するのであれば、求人広告の費用を支払え」と言って、退職させないようにすることが可能になります。

民法によって退職の自由が保障されていますので、その趣旨に照らし合わせて考えると、退職の足かせになるような請求が認められる可能性はゼロです。

入社して1週間で退職したとしても、法律や契約に違反する行為ではありません。その者に特に落ち度はありませんので、退職者に費用を請求する根拠がありません。

したがって、従業員(退職者)に、求人広告の費用を負担させることはできません。

無責任に勝手気ままに退職した従業員を懲らしめたいという気持ちは分かりますが、退職した従業員の多くは、求人広告の費用がいくらで、それだけの損害を会社に与えたことを理解していないと思います。

退職したくてモチベーションが低い者を雇い続けても、会社に貢献することは期待できませんし、将来、トラブルを繰り返して会社が解雇したくなるかもしれません。そのようなことを考えると、早々に退職して良かったと考えを切り替えてください。

そして、採用の人選ミスがそもそもの原因と思いますので、採用面接の回数を増やしたり、採用方法を見直した方が良いです。また、職場の環境等に問題がある場合は、それを改善するべきです。