不倫を理由とする退職勧奨

不倫を理由とする退職勧奨

従業員が不倫をしていることが発覚しました。解雇が認められなければ、退職するよう説得することは可能でしょうか?

会社から従業員に、退職するよう説得(退職勧奨)をすることは可能ですが、男女雇用機会均等法に注意をする必要があります。

プライベートの言動については、会社が制限することはできませんので、プライベートの言動を理由にして解雇や懲戒処分を行うことはできません。

ただし、業務命令に違反したり、無断で職場を離脱したり、職務に専念しなかったり、会社の信用を失墜したり、業務に支障が生じたりしていれば、それを理由にして、就業規則に基づいて懲戒処分を行えます。

プライベートのことについては、会社に解雇や懲戒処分をする権限や根拠がありませんので、不倫行為の事実だけでは、解雇や懲戒処分をしても無効になります。

会社が一方的に解雇することはできませんが、会社から本人に「退職して欲しい」と退職勧奨をすることは可能です。

本人が退職勧奨に応じれば、退職(合意解約)が成立します。このときに、退職届を提出してもらったり、退職の合意書を作成していれば、本人の意思に基づいて退職したという証拠になります。解雇に関するトラブルを防止できます。

しかし、本人が退職勧奨に応じなければ、雇用を継続することになります。会社は退職するよう勧奨することしかできませんので、退職するかどうかは本人の意思によります。

場合によっては、数ヶ月分の賃金(金額は個々の事情や年齢等によります)を支払うことを条件にするケースもあります。

「退職勧奨に応じなければ解雇する」と嘘をついたり、本人が退職の意思がないことを通知したにもかかわらず、その後も長期間に渡って説得したり、他の従業員の面前で退職勧奨をしたり、退職するよう強要したりした場合は、退職勧奨に応じたとしても無効になります。

また、男女雇用機会均等法(第6条)によって、次のように規定されています。

事業主は、次に掲げる事項について、労働者の性別を理由として、差別的取扱いをしてはならない。

  1. 労働者の配置、昇進、降格及び教育訓練
  2. 住宅資金の貸付けその他これに準ずる福利厚生の措置であって厚生労働省令で定めるもの
  3. 労働者の職種及び雇用形態の変更
  4. 退職の勧奨、定年及び解雇並びに労働契約の更新

性別を理由として、差別的取扱いをしてはならない事項として、退職勧奨が挙げられています。したがって、従業員同士の不倫の場合に、男性従業員と女性従業員の一方に対してのみ退職勧奨をすると、特別な事情がない限り、法律違反になります。