懇親会に参加したときの通勤災害
懇親会に参加したときの通勤災害
業務を終了した後に、懇親会を開催して社内で飲酒をすることがあるのですが、万一、その帰宅途中で従業員がケガをしたときは、通勤災害と認められないのでしょうか?
懇親会の参加が強制の場合は通勤災害と認められますが、任意の場合は認められない可能性が高いです。
従業員が業務を終えて会社から帰宅する途中でケガをしたときは、通常は通勤災害として労災保険の給付を受けられます。
しかし、従業員が帰宅する途中で、映画を観たり、飲酒をしたりしたときは、通勤を逸脱又は中断したものとして、それ以降はケガをしても通勤災害とは認められません。なお、日用品を購入するなど、些細な行為については、逸脱又は中断には該当しませんので、通勤災害と認められます。
そして、本来の業務の他に、会社が懇親会や歓迎会、送迎会、新年会、忘年会、運動会、社員旅行等を開催することがあります。
懇親会等が業務であれば、終了後に帰宅する途中でケガをしたときは、通勤災害と認められます。また、懇親会等の最中にケガをしたときも、業務災害と認められます。
一方、懇親会等が業務でない場合は、自分の意思で帰宅する途中で飲酒をした場合と同様に、逸脱又は中断したものと考えられます。通勤災害とは認められませんので、ケガをしたときは、私傷病として健康保険を利用することになります。
懇親会等が業務と認められるかどうかは、参加が強制か任意かが最も重要な要素になります。会社から業務命令として懇親会等の参加を強制していなかったとしても、次の事項に該当する場合は、強制していたと判断されます。
- 労働時間内に行って、不参加の場合は早退や欠勤扱いとなって賃金が減額される
- 参加しないと何らかの不利益を受ける
- 準備や後片付け等の作業を命じられた
- 幹事や世話役を担当させられた
- 全員が参加していた
いずれにも該当しないで、懇親会等の参加が任意で、実際にも、不参加の従業員がいたり、参加者が費用の一部を負担していた場合は、任意であったことを裏付ける要素になります。
また、懇親会が短時間(1時間以内)で終了している場合は、その前の業務から途切れていないものとして、通勤災害と認められる可能性があります。
懇親会等の参加が強制か任意かが最大の要素になりますが、1つ1つの対応を見ると、強制と受け取られる要素と任意と受け取られる要素が混在して、「100%任意である」「100%強制である」と言い切れるケースは少ないと思います。
最終的には裁判によって、個々のケースごとに判断されます。中途半端になっているとトラブルの原因になりますので、懇親会等を開催する都度、参加を強制するのか任意とするのかを決めて、1つ1つの対応もそれに合わせることが望ましいです。
業務として参加を強制するのであれば、会社が費用の全額を負担して、懇親会等の時間に対して賃金(残業手当)を支払うことになります。