とりあえず年金請求
とりあえず年金請求
来年60歳になる従業員がいますが、それなりの賃金を支払う予定ですので、年金は支給されないそうです。その場合は、年金の請求手続きは不要ですか?
とりあえず、年金の請求手続きはした方が良いと思います。
60歳以降も勤務を継続して厚生年金保険に加入しながら受給する年金は、「在職老齢年金」と言って、賃金(標準報酬月額)に応じて、減額調整される仕組みがあります。
具体的には、「老齢厚生年金の月額」と「標準報酬月額+標準賞与額/12ヶ月」の合計が51万円(2025年度)を超える場合は、超える額の1/2の年金が支給停止になります。
例えば、「老齢厚生年金の月額」が10万円、「標準報酬月額+標準賞与額/12ヶ月」が39万円とすると、合計49万円になります。51万円以内ですので、月額10万円の年金は満額支給されます。
一方、「老齢厚生年金の月額」が15万円、「標準報酬月額+標準賞与額/12ヶ月」が66万円とすると、合計81万円になります。51万円を超える額(30万円)の1/2の年金(15万円)が支給停止になりますので、結果的に0円で全額支給停止になります。
そのため、「年金の請求手続きをしても支給されないから、手続きは不要だ」と考える人がいます。確かにそうですが、5年後の賃金まで保証されていることはないと思います。
また、支給停止の基準となる51万円(支給停止調整額)は、物価変動率や標準報酬平均額に応じて、毎年見直されます。
年金の請求手続きをしていれば、賃金が下がったり、支給停止調整額が引き上げられたりして、年金の一部が支給されるようになったときは、全額支給停止の状態が解除されて、自動的に年金が支給されます。
年金の請求手続きをしていなければ、年金は支給されません。年金は5年前までさかのぼって請求できますが、請求を忘れて5年が経過すると支給されません。厚生年金保険料を適正に支払っていても、時効によって無効になります。
年金を請求するデメリットはその手間だけですので、とりあえず年金の請求手続きはしておくべきです。
具体的には、受給開始年齢になる3ヶ月前に、日本年金機構(年金事務所)から年金請求書が送付されます。なお、65歳未満の者に支給される特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢は、段階的に引き上げられています。
そして、年金請求書には年金の加入記録が記載されていますので、それを確認して、年金事務所に提出します。提出方法としては、@年金事務所の窓口に提出、A年金事務所に郵送で提出、B電子申請により提出、の3通りがあります。