減給できる上限額(労働基準法の減給の制裁)

減給できる上限額(労働基準法の減給の制裁)

  • 従業員が違反行為をして、会社が懲戒処分の減給をするときは、1回につき平均賃金の1日分の半額以内としていますか?
  • 会社が減給の制裁をするときは、労働基準法によって、1回につき平均賃金の1日分の半額以内とすることが定められています。

【解説】

労働基準法(第91条)によって、次のように規定されています。

就業規則で、懲戒処分として減給の制裁を定める場合は、

労働基準法(第24条)によって、賃金は全額を支払うことが義務付けられています。社会保険料や税金など、法律で定められている以外のものを賃金から減額・控除すると、原則的には、賃金の未払いとして、労働基準法違反になります。

しかし、会社は組織を運営するために、職場の秩序を維持する必要があります。そのため、職場の秩序を乱す従業員に対して、懲戒処分(制裁処分)を行うことが認められています。

懲戒処分(制裁処分)として、懲戒解雇、諭旨退職、出勤停止、減給、けん責(戒告、訓戒)が一般的に定められています。減給もその1つとして認められています。

ただし、会社が懲戒処分を行う場合は、就業規則を作成して、懲戒処分の種類、内容、事由を記載して、従業員に周知する必要があります。

そして、減給の制限がないと、違反をした月は無給という会社が現れるかもしれません。それでは従業員が生活できませんので、1回につき平均賃金の半額、複数回につき賃金総額の10分の1という上限が設定されています。

例えば、平均賃金が1日1万円、1ヶ月の賃金総額が30万円として、従業員が減給処分に相当する違反行為を繰り返したとします。1回につき平均賃金の半額が上限ですので、5,000円が上限額になります。2,000円や3,000円とすることも可能です。

そして、1回につき5,000円として、1ヶ月に6回減給処分をすると、3万円(5,000円×6回)で賃金総額の10分の1になります。7回目以降の減給は、翌月に支払う賃金で処理をすることになります。

しかし、1ヶ月に6回も7回も減給処分に該当するような違反行為を繰り返す従業員を見過ごすことはできませんので、通常は更に重い懲戒処分を検討することになると思います。

また、労働契約法(第15条)によって、次のように規定されています。

要するに、違反行為の内容と懲戒処分の程度が釣り合っていないといけない、違反行為の内容と比べて厳し過ぎる懲戒処分は無効になるということです。

懲戒処分を決定する前に、本人に弁明の機会を与えて、本人の言い分や反省の有無など、様々な事情を総合的に考慮して決定する必要があります。

なお、遅刻、早退、欠勤等の不就業の時間に対する賃金を減額することは、減給の制裁には当たりません。懲戒処分として出勤停止を命じる場合も同じです。「ノーワーク・ノーペイの原則」と言って、不就業の時間に対して賃金を支払う義務はありません。

また、人事権の行使として降格や降職をして、それに見合った賃金(役職手当)に減額する場合も、懲戒処分の減給には当たりません。ただし、その降格や降職が、人事権の行使として行うものか、懲戒処分として行うものか、曖昧になっているとトラブルの原因になります。

責任の程度を縮小したり、業務内容を変更したりしていると、人事権の行使と認められやすいです。しかし、責任の程度や業務内容は従来のままで、賃金を減額していると、懲戒処分と判断されやすいです。そうなると、労働基準法で定められている減給の制裁のルールが適用されます。


執筆者:社会保険労務士 木下貴雄【 登録番号 第27020179号 】
就業規則を専門とする社会保険労務士です。中小零細企業の就業規則に関する悩みは全て解決いたします。日々の業務やホームページでは、分かりやすく伝えることを心掛けています。

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