制裁規定(減給)の制限

制裁規定(減給)の制限

  • 従業員が違反行為をして、会社が減給処分を行うときは、1回につき平均賃金の1日分の半額以内にしていますか?
  • 減給の制裁(減給処分)を行う場合は、労働基準法によって、1回につき平均賃金の1日分の半額を超えてはいけないことが定められています。

【解説】

労働基準法(第91条)で、次のように規定されています。

「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない。」

就業規則で、懲戒処分(制裁処分)として減給を規定している場合は、

原則的には、従業員が労働した時間に対して、会社は賃金を支払うことが義務付けられています。税金や社会保険料等を控除した残りの賃金の全額を支払わなければ、賃金の未払いとして、労働基準法違反になります。

しかし、会社は組織を円滑に運営するために、職場の秩序を維持する必要があります。そのため、職場の秩序を乱す従業員に対して、懲戒処分(制裁処分)を行うことが認められています。

懲戒処分には、懲戒解雇、諭旨退職、降格、出勤停止、けん責(戒告、訓戒)等がありますが、減給もその1つとして認められています。

ただし、懲戒処分を行う場合は就業規則を作成して、懲戒処分の種類、内容、事由を記載して、従業員に周知しておく必要があります。従業員数が10人未満の会社は就業規則を労働基準監督署に届けなくても構いませんが、10人以上の会社は就業規則を届け出ることが義務付けられています。

そして、減給の制限がないと、違反をした月は賃金を一切支払わないという会社が現れるかもしれません。それでは従業員が生活できませんので、1回につき平均賃金の半額、複数回でも賃金総額の10分の1という制限(上限)が定められています。

例えば、平均賃金が1日1万円、1ヶ月の賃金総額が30万円として、従業員が減給処分に当たる違反行為を複数回 行ったとします。

そして、1ヶ月に6回減給処分を行うとすると、3万円(5,000円×6回)で賃金総額の10分の1になります。7回減給処分を行う場合は、賃金総額の10分の1を超えますので、7回目以降の減給は翌月に支払う賃金で処理をすることになります。

ただし、1ヶ月に6回も7回も減給処分に該当するような違反行為を繰り返す従業員を見過ごすことはできませんので、普通はより厳しい懲戒処分を検討します。翌月に減給を繰り越すケースは、余り現実的ではないように思います。

また、労働契約法によって、次のように規定されています。

「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。」

要するに、違反行為と懲戒処分の程度が釣り合っていないといけない、違反行為の内容と比べて厳し過ぎる懲戒処分は無効になるということです。また、反省の有無や本人の言い分など、様々な事情も総合的に考慮されます。

なお、遅刻、早退、欠勤等で勤務しなかった時間分の賃金を差し引くことは、減給処分には当たりません。懲戒処分として出勤停止を命じる場合も同じです。「ノーワークノーペイの原則」と言って、勤務しなかった時間に対して賃金を支払う義務はありません。

また、人事権の行使として降格や降職をして、それに見合った賃金に減額する場合も、懲戒処分の減給には当たりません。ただし、その降格や降職が、人事権の行使として行うものか、懲戒処分として行うものか、曖昧になっているとトラブルの原因になります。

業務の内容を変更したり、責任の程度を縮小したりしていると、人事権の行使と認められやすいです。しかし、賃金だけを減額して、他は従来どおりとすると、懲戒処分と判断されやすいです。そうなると、減給の制限が適用されます。

もっと詳しく