罰金制度

罰金制度

  • 仕事上のミスや違反行為に対して、罰金制度を設けていませんか?
  • 通常の罰金制度は、労働基準法に違反しているケースが多いです。可能とする方法もありますが、罰金制度を設けても問題を解決できるケースは少ないです。

【解説】

次のような罰金制度を設けている会社があります。

よくありそうな話ですが、このような罰金制度は労働基準法に違反しているケースが多いです。

労働基準法(第16条)によって、次のように規定されています。

「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」

ここでは2つの内容が定められています。

前半の「労働契約の不履行」というのは、従業員が労働義務を履行しなかったこと、つまり、遅刻や欠勤が該当します。その場合に「違約金」、要するに罰金を支払わせるような制度を定めることを禁止しています。

後半の「損害賠償額を予定する契約」というのは、“額”を予定していることがポイントで、実際の損害額に関係なく、「1,000円を支払え」というように予め一律の金額を設定する契約(約束)を禁止しています。

最初に列挙したような罰金制度は、この規定に違反しています。もし、従業員が労働基準監督署に駆け込むと、労働基準法違反として、会社は是正勧告を受けることになると思います。

ただし、罰金制度ではなく、制裁処分(懲戒処分)として、減給することは労働基準法によって認められています。

労働基準法(第91条)では、次のように規定されています。

「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない。」

減給の額が1回の違反行為につき平均賃金の1日分の半額の範囲内であれば、減給処分を行うことができます。また、違反行為が複数回あった場合は、減給する額は1ヶ月の賃金総額の10分の1以内にする必要があります。

例えば、平均賃金が1日1万円の従業員については、1回の違反行為につき5千円以内であれば減給をしても、労働基準法上は問題ありません。

しかし、会社が減給処分を行う場合は、いくつか注意点があります。

  1. 就業規則に、制裁(懲戒)を行う事由(違反行為)と減給処分(制裁・懲戒処分)の内容を規定すること
  2. 違反の程度と制裁(懲戒)の重さのバランスが取れていること

2.について、違反行為に対して厳し過ぎる制裁(懲戒)処分は無効になります。(労働契約法第15条違反)

例えば、10分の遅刻をしたときに、いきなり平均賃金の半額(1万円の者については5千円)を減給することは、常識的に考えると厳し過ぎると思います。

会社が注意や指導をしたにもかかわらず、遅刻や欠勤を繰り返す従業員には、最初は始末書を提出させる譴責(戒告)処分が妥当です。

経営者としては罰金を払わせる(減給する)ことで気が晴れるかもしれませんが、それで問題が解決するケースは少ないように思います。

遅刻を繰り返すような場合は、上司が指導や注意を繰り返したり、どのような支障が生じているのか丁寧に説明したり、一緒に原因や解決策を考えたりする方が賢明です。面倒ですが、解決の近道と思います。

ところで、皆勤手当を支給している会社があります。遅刻や欠勤をしたときに、皆勤手当を減額しても違法にはならないのでしょうか?

この場合は、ベースがゼロで、無遅刻・無欠勤だった場合に褒美として皆勤手当を加算して支給していると考えられますので、違法にはなりません。

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