兼業・副業の禁止
兼業・副業の禁止
- 従業員が副業や兼業を申し出たときに、一律に禁止していませんか?
- 副業や兼業を一律に禁止するという取扱いは、原則的には認められません。
【解説】
会社の労働時間外の時間は、本人のプライベートな時間ですので、どのように使うかは本人の自由です。会社が労働時間外まで従業員の行動を制限することはできませんので、原則的には、副業や兼業を禁止することはできません。
しかし、会社には、安全配慮義務や健康配慮義務が課されています。つまり、会社は従業員の安全や健康に配慮して、従業員に危険が及ばないように対処することが求められます。
例えば、会社が従業員に過重労働をさせて、健康状態が悪化していることを知っていたにもかかわらず、放置して、万一、従業員が過労死や精神疾患を発症したときは、会社の責任が問われます。
したがって、他社で副業や兼業をすることによって、過重労働になって、疲労の蓄積が予想される場合は、必要な配慮として、会社は兼業を禁止することができます。また、そうする必要があります。
疲労が蓄積する心配がなくても、兼業先が競業企業の場合は、会社の機密情報が漏洩したり、会社の利益が侵害されたり、兼業先の業種によっては、会社の信用を失墜する恐れがあります。このように業務に支障が生じる恐れがある場合も、副業や兼業を禁止する正当な理由になります。
近年は政策として副業や兼業が促進されていますが、会社が従業員の副業や兼業を把握していないと、リスクが現実になってしまいます。個別に状況を把握する必要がありますので、会社の対応としては、次の2通りの方法が考えられます。
- 副業や兼業は届出制にして(原則として認める)、会社の判断により、個別に禁止をする
- 副業や兼業は許可制にして(原則として認めない)、会社の判断により、個別に許可をする
禁止の基準と許可の基準が同じであれば、どちらも同じ結果になりますので、どちらも問題はありません。なお、一律に禁止するという取扱いは、問題があります。
会社に課されている安全配慮義務や健康配慮義務を根拠にして、副業や兼業をしようとする従業員に対して、業務命令として届出や許可を義務付けることができます。通常は就業規則で、副業や兼業に関するルールや取扱いについて定めます。
そして、フルタイムで勤務をする正社員等については、兼業をすると、ほとんどの場合、過労死の認定基準(1ヶ月の総労働時間が約250時間)を超えますので、兼業は禁止するべきです。
一方、例えば、週20時間程度のアルバイトやパートタイマー等については、別の会社で週20時間程度の勤務をしたとしても、過重労働になる危険性は考えにくいです。
また、兼業先が競業企業以外で機密情報の漏洩や利益の侵害の危険がなく、信用を失墜する恐れがなければ、兼業を禁止する合理的な理由がありません。そのような場合は、副業や兼業の申出を認めざるを得ません。
副業や兼業を開始した以降は、遅刻や欠勤が増加していないか、時間外勤務や休日勤務の指示に応じているか、業務に支障が生じていないか、といった確認を定期的に行うことが望ましいです。