3回の遅刻で欠勤控除

3回の遅刻で欠勤控除

  • 3回の遅刻を1日の欠勤とみなして、賃金を減額していませんか?
  • 遅刻した時間分の賃金を減額することは可能ですが、それを超えて減額することはできません。

【解説】

「遅刻を3回したときは、欠勤したものとみなして1日分の賃金を減額する」と規定している就業規則を見掛けることがありますが、このような規定は問題があります。

労働基準法(第24条)によって、次のように規定されています。

「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。・・・」

「賃金の全額払い」と呼ばれる規定です。法令で定められている税金や社会保険料(健康保険、厚生年金保険、雇用保険の保険料)、労使協定で定めたものを除いて、会社は賃金の全額を支払うことが義務付けられています。

ただし、「ノーワーク・ノーペイ」という原則に基づいて、勤務しなかった時間に対する賃金を支払う義務はありません。遅刻や欠勤をした時間に対する賃金を減額することは可能です。

したがって、例えば、1時間の遅刻を3回したときに、3時間分の賃金を減額することは可能ですが、欠勤とみなして1日分(8時間分)の賃金を減額することは、賃金の全額払いの規定に抵触します。「賃金の不払い」と呼ばれる違法行為に当たります。

これとは別に、懲戒処分として、遅刻を繰り返した場合に減給処分を行うことが考えられます。減給処分は、賃金の全額払い(賃金の不払い)の対象外ですが、適正に行うためには注意点が3つあります。

1.就業規則に、減給の事由と減給の内容を規定していること

会社が減給等の懲戒処分をする場合は、その根拠として、懲戒処分に関する事項(懲戒処分の事由と懲戒処分の内容)を就業規則に規定している必要があります。

2.減給は、平均賃金の1日分の半額以内であること

就業規則に減給処分を規定する場合は、平均賃金の1日分の半額を超えてはいけないことが、労働基準法で定められています。減給処分は平均賃金の1日分の半額が上限ですので、1日分の賃金を減額していると労働基準法違反になります。

3.違反行為の程度と懲戒処分の内容が釣り合っていること

会社には、職場の秩序を乱したり、会社に損害を与えたりした従業員に対して、懲戒処分を行うことが認められています。しかし、例えば、会社のボールペンを間違って持って帰った従業員を懲戒解雇することは認められません。

違反行為と懲戒処分のバランスが釣り合っている必要があるのですが、3回の遅刻をしたときに自動的に減給処分をしていると、場合によっては釣り合っていない(懲戒処分が重過ぎる)と指摘される恐れがあります。遅刻の原因は、次のように様々です。

減給処分(懲戒処分)の事由として、「遅刻を繰り返したとき」と規定するのは良いと思います。そして、実務上は、遅刻をした理由を本人に確認した上で、懲戒処分の内容はケースバイケースで判断するべきです。

なお、減給処分(懲戒処分)の事由として、“3回”と具体的な遅刻の回数を規定していると、それに縛られて柔軟な対応が行いにくくなります。“繰り返したとき”という表現の方が良いでしょう。

また、会社(上司)が遅刻に関して指導や注意をしないまま、いきなり減給処分とするのは厳し過ぎますので、最初は、口頭で指導や注意をして、次は始末書を提出させて、その次は減給と段階を踏んで進めるべきです。

以上のとおり、減給処分(懲戒処分)はバランスが釣り合っている必要がありますが、その判断は難しいです。

無難な方法としては、賞与の額や昇給の額に反映させる方法があります。賞与や昇給に関して、具体的な約束をしていなければ、会社が自由に決定できますので、問題が生じることはありません。

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