年金事務所の調査
年金事務所の調査
年金事務所から通知が来て、指定した日時に指定した書類を持って、年金事務所に訪問するよう求められました。どうすれば良いでしょうか?
これまでの社会保険(健康保険と厚生年金保険)の手続きが適正に行われていたかどうかを調査するものです。通知が来た後に対応できることは特にありません。
社会保険(健康保険と厚生年金保険)の手続きについて、年金事務所に訪問して、調査される内容は主に次のとおりです。
- 社会保険の加入義務がある者を適正に加入させているか?
原則として、週30時間が加入義務の有無の目安になります。所定労働時間が1週30時間未満であっても、常態として残業時間を含めた実働時間が週30時間を超えている場合は、加入義務があると判断されます。また、厚生年金保険の被保険者数が51人以上の特定適用事業所においては、週20時間が加入義務の有無の基準になります。
- 社会保険の加入日が適正か?
試用期間が終了してから社会保険(厚生年金保険と健康保険)の加入手続きをしている会社がありますが、加入要件を満たしている場合は、入社日から加入義務があります。
- 標準報酬月額が適正か?
通勤手当については、非課税限度額が定められていて、非課税の取扱いをしている会社が一般的ですが、社会保険においては、通勤手当を除外することは認められていません。毎年、算定基礎届を作成するときは、通勤手当や残業手当も報酬に含めて届け出る必要があります。
- 社会保険料の控除額が適正か?
厚生年金保険の保険料率は現在は一定ですが、健康保険の保険料は毎年改定されますので、それに応じた保険料を控除する必要があります。40歳以上の従業員については、介護保険料を控除する必要があります。
- 月額変更届の提出が漏れていないか?
固定的な賃金(手当)を見直して、標準報酬月額が2等級以上変動したときは、月額変更届を提出しないといけません。
- 賞与支払届の提出が漏れていないか?
賞与を支払ったときは、賞与支払届を提出しないといけません。
また、調査を受けるとき、通常は次の書類を持参するよう求められます。
- 労働者名簿、雇用契約書
- 源泉所得税領収証書
- 賃金台帳(又は、支給明細書、給与振込明細書)
- 出勤簿又はタイムカード
- 届出書類の会社の控え
- 就業規則、賃金規程
年金事務所の職員が、これらの書類と照合しながら調査を進めますので、誤魔化そうと思っても通用しません。
また、例えば、賞与支払届の提出を忘れていたことに気付いて、さかのぼって賞与支払届を提出すると、調査の通知をした後に手続きをしたことが明らかです。「届出義務があることを知っていて提出しなかったのですか?」「調査の通知がなければ、提出は怠ったままでしたか?」と聞かれると、返答に困ってしまいます。
調査の通知が来た後に、適正な手続きをしても印象は良くないと思います。会社は特別な対応はしないで、そのまま正直に受け答えをするのが賢明です。
そして、例えば、社会保険の加入義務があるパートタイマーを加入させていないことが、調査によって発覚した場合は、最大2年前までさかのぼって加入することになります。つまり、厚生年金保険、健康保険(及び介護保険)の保険料も、2年前までさかのぼって納付するよう求められます。
標準報酬月額が9.8万円の従業員の健康保険の保険料は月額約5,000円(本人負担分)、厚生年金保険の保険料は月額約9,000円(本人負担分)です。
毎月、賃金から控除していれば負担できる額と思いますが、2年分を一括で納付することになると、本人負担分だけで30万円を超えてしまいます。
その後、本人に支給する賃金から社会保険料を分割して控除できれば良いですが、既に退職していたり、これが原因で退職したりすると、面倒なことになります。
社会保険料の納付義務は会社にありますので、一旦、会社が本人負担分と会社負担分を合わせて納付する必要があります。後日に、本人負担分を退職者に請求しても、応じてもらえないケースがあります。
年金事務所から調査の通知が来た後に対応することは難しいので、日頃から適正に手続きをすることが重要です。