自然災害で早退したときの賃金
自然災害で早退したときの賃金
先日の台風が通過した日に、終業時刻の時間帯に電車の運休が予想されたため、従業員に早退するよう指示をしました。賃金はどのように処理すれば良いでしょうか?
法律的には、賃金を支払う義務はありませんので、早退した時間分の賃金を減額できます。
労働契約法(第5条)によって、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と規定されています。
このように、会社には安全配慮義務がありますので、従業員に危険が迫っている場合は、それを回避するよう配慮・努力する義務があります。
従業員が終業時刻まで勤務していると安全に帰宅できないと予想される場合は、その危険を回避するために、従業員に早退の指示をすることが望ましい対応と考えられます。
また、早退の原因となった自然現象(台風・降雪・地震等)による電車の運休は、会社の責任ではありません。不可抗力ですので、ノーワーク・ノーペイの原則が適用されます。
勤務しなかった時間に対する賃金は、支払う義務がありませんので、早退した時間分の賃金は減額できます。その上で、どのように処理をするかは、それぞれの会社の考え方によります。
このような状況は、出勤時に電車が遅延して、従業員が会社に遅延証明書を提出して、遅刻した場合と似ています。法律的には賃金を減額できますが、遅刻はなかったものとして、通常の賃金を支払っている会社が多いです。
電車の運休が予想されて早退するケースは、後になって運休しない可能性がありますが、電車が遅延して遅刻するケースと同じ取扱いとする方法が従業員にとっては分かりやすくて良いと思います。
一方、電車の運休が予想されるほどではない(安全に帰宅できると考えられる)状況で、会社(所属長)が早退の指示をしたときは、会社の都合で休業させたものとして、休業手当(平均賃金の6割以上)を支払う必要があります。満額の通常の賃金を支払っても構いません。
同じ状況で、会社(所属長)から早退の指示はしないで、「各自の判断で早退を許可する」と言って、早退したときは、本人の都合による休業ですので、早退した時間分の賃金を減額できます。
どの場合でも、無給か有給かは重要なことですので、会社(所属長)が早退の指示や許可をするときは、同時に賃金の取扱いについて説明することが望ましいです。従業員が「賃金は減額されない」と思い込んでいて、後で賃金を減額するとトラブルになります。

