自然災害を理由とする早退
自然災害を理由とする早退
台風が接近していて、終業時刻の前後の時間帯に電車の運休が予想されたため、従業員に早退するよう指示しました。賃金はどのように処理すれば良いでしょうか?
賃金を支払う義務はないと考えられますので、早退した時間分の賃金を減額することができます。
会社には安全配慮義務がありますので、終業時刻まで勤務していると、安全に帰宅できないと予見される場合は、その危険を回避することが求められます。したがって、そのような従業員に対して、早退の指示をすることは合理性があると考えられます。
また、早退の原因となった自然現象(台風・降雪・地震等)による電車の運休は、会社の責任ではありません。不可抗力ですので、ノーワーク・ノーペイの原則が適用されます。
勤務しなかった時間に対する賃金は支払う義務がありませんので、早退した時間分の賃金を減額することができます。その上で、どのように処理をするかは、それぞれの会社の考え方によります。
このような状況は、従業員が出勤する際に電車が遅延して、遅延証明書を会社に提出して、遅刻した場合と似ています。法律的には賃金を減額できますが、遅刻はなかったものとして、通常の賃金を支払っている会社が多いです。
実際に電車が遅延して遅刻するケースと電車の運休が予想されて早退するケースは、後になって運休が撤回・修正される可能性が残っていますが、同じ取扱いとするのが従業員にとっては分かりやすくて良いと思います。
一方、電車の運休が予想されるほどではない(安全に帰宅できると考えられる)状況で、会社(所属長)が早退の指示をしたときは、会社の都合で休業させたものとして、休業手当(平均賃金の6割以上)を支払う必要があります。
同じ状況で、会社(所属長)から早退の指示はしないで、「各自の判断で早退を許可する」と言って、早退したときは、本人の都合による休業になりますので、早退した時間分の賃金を減額できます。
いずれの場合でも、賃金をどのように処理するかは重要なことですので、会社(所属長)が早退の指示や許可をするときは、同時に賃金の減額の有無について説明するべきです。従業員が「賃金は減額されない」と思い込んでいて、後で減額をするとトラブルになります。