タケダシステム事件

タケダシステム事件 事件の経緯

就業規則に、「女子従業員は毎月生理休暇を必要日数だけとることができる。そのうち年間24日を有給とする。」という規定があり、女性従業員が生理休暇を取得しても1年間で24日以内は基本給が減額されない取扱いになっていました。

会社は労働組合と交渉を行ったのですが、労働組合から同意を得られないまま、就業規則の規定を「女子従業員は毎月生理休暇を必要日数だけとることができる。そのうち月2日を限度とし、1日につき基本給1日分の68%を補償する。」と変更して、適用を開始しました。

就業規則の変更により、生理休暇を取得した日は基本給が32%減額され、更に、1ヶ月に2日を超える生理休暇については基本給が100%減額されることになりました。

これに対して従業員が、就業規則の一方的な不利益変更は無効であると主張して、減額された賃金の支払いを求めて会社を提訴しました。

タケダシステム事件 判決の概要

就業規則を作成又は変更することによって、従業員の既得の権利を奪い、従業員に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として許されない。

しかし、就業規則の条項が合理的なものである限り、個々の従業員が就業規則に同意しないとしても、その適用を拒否することは許されない。

本件においても、就業規則が不利益に変更されたものであっても、不利益変更が合理的なものであれば、同意していない従業員にも適用することができる。

そして、不利益変更が合理的かどうかを判断する際は、就業規則の変更の内容及び変更の必要性の両面から考察するために、次のような諸事情を総合的に勘案する必要がある。

  1. 就業規則の変更により、従業員に及ぶ不利益の程度
  2. 就業規則の変更に関連して行われた賃金の改善状況
  3. 就業規則を変更する必要性の有無(有給生理休暇の濫用の有無)
  4. 労働組合との交渉の経緯
  5. 他の従業員の対応
  6. 関連会社における取扱い
  7. 我が国社会における生理休暇制度の一般的な状況

タケダシステム事件 解説

就業規則の不利益変更について、裁判になったケースです。

1年間で24日は有給で生理休暇を取得できることになっていたのですが、基本給の支給を100%から68%に減額して、1ヶ月に2日を超える生理休暇は無給とする内容に、会社が就業規則を変更しました。

会社が一方的に就業規則を不利益に変更することは原則的には認められないけれども、変更が合理的なものである場合に限り、変更は有効で、反対する従業員にも適用できることを示しました。

就業規則の変更が合理的かどうかは、変更の内容と変更の必要性の両面から検討するのですが、諸事情に関する検証が不十分であったため、原審に差し戻されることになりました。

そして、差戻し審では、生理休暇の濫用があったと認められる等、諸事情を考慮して就業規則の変更は有効と判断しました。

合理性の判断をする際は、「1.就業規則の変更によって従業員に及ぶ不利益の程度」と「3.就業規則を変更する必要性の程度」が釣り合っているかどうかが最大のポイントになります。

会社が就業規則を変更しようとする場合は、多数の従業員から同意が得られそうか予測して、他の要件(2.4.5.6.7.)も補足的にクリアしながら進める必要があります。

なお、生理休暇は「ノーワークノーペイの原則」によって、本来は無給で処理をしても差し支えありません。

無給で処理をしている会社ではトラブルになることは考えにくいですが、有給で処理をしている会社では、この会社のようにトラブルになるケースが多いです。

労働基準法上は、「生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したとき」という条件を満たしている場合に生理休暇を取得できるのですが、会社(上司)が「就業が著しく困難」かどうかを判定することは不可能です。それを悪用して、毎月有給休暇を取得する従業員が現れます。

まじめに出勤している従業員が不公平感を持って、職場の秩序が乱れます。

会社は、有給で処理をしていることが原因であると考えて、生理休暇を無給とする取扱いに就業規則の規定を変更して、悪用していた従業員とトラブルになるというパターンです。