陸上自衛隊事件(安全配慮義務)

陸上自衛隊事件 事件の経緯

陸上自衛隊の隊員が、自衛隊内の車両整備工場で車両を整備していたところ、後退してきたトラックにひかれて死亡しました。

これに対して遺族は、使用者である国は、自衛隊員の生命に危険が生じないよう人的・物的環境を整備して、自衛隊員の安全管理に万全を期すべき義務があるにもかかわらず、これを怠ったとして、損害賠償を求めて提訴しました。

陸上自衛隊事件 判決の概要

国家公務員法や自衛隊法に基づいて、国家公務員である自衛隊員は、職務に専念する義務、法令及び上司の命令に従う義務がある。また、これに対して国は、公務員(自衛隊員)に給与を支払う義務がある。

国には給与の支払い義務があるだけではなく、国(上司)の指示に基づいて公務員が公務を遂行する際は、公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮する義務(「安全配慮義務」)がある。

もちろん、安全配慮義務の具体的な内容は、公務員の職種や地位など、安全配慮義務が問題となるそれぞれの状況によって異なる。更に自衛隊員の場合は、通常の作業時、訓練時、防衛出動時、治安出動時、災害派遣時のいずれの勤務なのかによっても異なる。

このような安全配慮義務は、法律関係がある当事者間において、その法律関係に付随する義務、信義則上の義務として一般的に認められ、国と公務員との間においても当てはまらないとする理由はない。

公務員が安心して誠実に公務を履行するためには、国が公務員に対して安全配慮義務を負い、これを尽くすことが必要不可欠である。また、国家公務員法等で定められている災害補償制度も、国が公務員に対して安全配慮義務を負うことを前提として、この義務を尽くした上で発生した公務災害に対処するために設けられたものである。

陸上自衛隊事件 解説

公務員が公務を遂行するために、国が場所や設備等を供給する場合は、国は公務員の生命や健康に危険が生じないよう注意して、物的・人的環境を整備する義務(「安全配慮義務」)があることが示された裁判例です。

陸上自衛隊の隊員は国家公務員法や自衛隊法が適用されますので、一般の民間企業とは多少その関係性が異なりますが、いずれにしても使用者(国、会社、上司)の業務命令には従う義務がありますので、それに付随する義務として、安全配慮義務に関しては否定する理由がないと判断されています。

仮に、安全が保障されていない状態で業務を遂行して、従業員が負傷をしても本人の自己責任ということになれば、上司の業務命令に従わない権利(自由裁量)を認めなければフェアではありません。自己責任と自由裁量はセットでなければなりません。

従業員には業務命令に従う義務があることを前提とすると、会社(国)には安全配慮義務があるということで、バランスが取れていることになります。