労働時間の変動と社会保険の加入義務
労働時間の変動と社会保険の加入義務
- 形式上は社会保険の加入要件を満たしていなくても、実際の勤務状況が加入要件を満たしている者について、社会保険の加入手続きをしていますか?
- 雇用契約上の労働時間と実際の労働時間に乖離がある場合は、実際の労働時間で判断されます。
【解説】
従業員数(厚生年金保険の被保険者数)が51人以上の特定適用事業所において、次の要件を全て満たしているパートタイマー等については、社会保険(厚生年金保険と健康保険)に加入する義務があります。
- 所定労働時間が週20時間以上
- 所定内賃金が月額8.8万円以上
- 学生でない
例えば、1週間の所定労働時間が16時間(1日4時間×週4日勤務)のパートタイマーについては、社会保険の加入義務がありません(加入できません)。
「所定労働時間=契約上の定時の労働時間」が基準ということですので、残業時間は含みません。しかし、就業規則や雇用契約書等で定めた契約上の労働時間と、実際の労働時間に乖離がある場合は、実際の労働時間で判断されます。
日本年金機構が公表している「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大Q&A」では、次のように示されています。
(問18の2)就業規則や雇用契約書等で定められた所定労働時間が週20時間未満である者が、業務の都合等により恒常的に実際の労働時間が週20時間以上となった場合は、どのように取り扱うのか。
(答)実際の労働時間が連続する2月において週20時間以上となった場合で、引き続き同様の状態が続いている又は続くことが見込まれる場合は、実際の労働時間が週20時間以上となった月の3月目の初日に被保険者の資格を取得します。
時間外労働や休日労働の時間が増加して、実際の労働時間(実働時間)が2ヶ月連続して週20時間以上になって、引き続きその状態が見込まれる場合は、3ヶ月目の初日に社会保険(厚生年金保険と健康保険)の加入義務が生じます。
週単位ではなく、月単位で平均して1週20時間以上かどうか判定します。そして、賃金計算締切日が毎月末日の会社で、4月と5月の実働時間を平均して1週20時間以上になったときは、6月1日付で資格取得届を提出することになります。
後で発覚したときは、6月1日にさかのぼって加入することになります。その場合は、厚生年金保険及び健康保険の保険料も、さかのぼって納付しないといけません。
上の取扱いに照らし合わせると、特別な事情があって、2ヶ月だけ実働時間が週20時間以上になって、その翌月以降は週20時間未満に戻った場合は、加入義務はありません。
また、特定適用事業所に該当しない会社は、社会保険(厚生年金保険と健康保険)の加入要件が異なっていて、次の両方の要件を満たしているパートタイマー等は加入義務があります。
- 1週の所定労働時間が正社員の4分の3以上
- 1月の所定労働日数が正社員の4分の3以上
この4分の3基準についても、厚生労働省の通達によって、次のように同様の取扱いが示されています。
所定労働時間又は所定労働日数と実際の労働時間又は労働日数が乖離していることが常態化している場合の取扱い
所定労働時間又は所定労働日数は4分の3基準を満たさないものの、事業主等に対する事情の聴取やタイムカード等の書類の確認を行った結果、実際の労働時間又は労働日数が直近2月において4分の3基準を満たしている場合で、今後も同様の状態が続くことが見込まれるときは、当該所定労働時間又は当該所定労働日数は4分の3基準を満たしているものとして取り扱うこととする。
雇用契約上は加入要件を満たしていなくても、実際の労働時間が2ヶ月連続して4分の3基準を満たしている場合は、社会保険の加入が義務付けられます。
なお、特定適用事業所の範囲を段階的(51人→36人→21人→0人)に拡大する計画で、2035年10月以降は全ての企業が特定適用事業所になります。

執筆者:社会保険労務士 木下貴雄【 登録番号 第27020179号 】
就業規則を専門とする社会保険労務士です。中小零細企業の就業規則に関する悩みは全て解決いたします。日々の業務やホームページでは、分かりやすく伝えることを心掛けています。

