退職の引き留め
退職の引き留め
- 従業員が「退職したい」と言ってきたときに、退職を拒否したり、罰金を支払わせようとしたりしていませんか?
- 従業員は退職する権利が保障されていますので、会社が退職の申出を拒否することはできません。
【解説】
民法によって、次のように、期間を定めないで雇用したときは、従業員は2週間前に申し出れば、自由に退職できることが定められています。
「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。」
従業員は退職する権利が保障されていますので、会社は退職の申出を拒否できません。退職は、従業員が申し出れば自動的に成立するもので、会社が「認める」「認めない」と言える性質のものではありません。
例えば、「貸している○万円を返済するまで、退職は認めない」、「引継ぎが完了するまで、退職は認めない」というような条件を付けることもできません。
お金を貸し借りするときに、そのような約束をしていたとしても無効になります。金銭の貸し借りと退職は別の問題ですので、それぞれ別々に処理をする必要があります。
いつまでに退職を申し出れば良いのかという期間については、就業規則で、従業員が自己都合で退職しようとするときは、1ヶ月以上前に退職届を提出することを義務付けている会社が多いです。
民法との関連がありますが、業務の引継ぎや新規採用の時間を要しますので、一般的には、就業規則に規定している“1ヶ月前”をルールとすることが認められています。
しかし、2ヶ月以上前になると、そうせざるを得ない特別な事情がない限り(会社の努力で改善できるような場合は)、認められない可能性が高いです。
また、労働基準法(第16条)において、次のように、「賠償予定の禁止」と呼ばれる規定があります。
「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」
要するに、退職するときに、従業員に違約金や罰金を支払わせることが禁止されています。あらかじめ、そのような約束をしていたとしても無効になります。例えば、次のような内容が該当します。
- 「退職するんだったら、○万円を支払え」
- 「採用経費が○万円掛かったから、立て替えろ」
経営者から「急に辞められると困る」という相談を受けることがありますが、「退職したい」と言っている従業員は仕事に対するモチベーションが低いです。他の従業員や顧客への悪影響を考えると、無理に引き留めない方が良いように思います。
会社はペナルティを科して辞めさせない方法を考えるより、円満な労使関係を築く方法や定着率を高める方法を考える方が建設的と思います。