時間外労働の制限

時間外労働の制限

  • 育児や介護をする従業員が申し出たときは、時間外労働を制限していますか?
  • 一定の要件をクリアする従業員が申し出たときは、育児介護休業法によって、一定の時間(制限時間)を超えて時間外労働をさせることが禁止されています。

【解説】

育児介護休業法(第17条第1項)によって、次のように規定されています。

「事業主は、労働基準法第36条第1項の規定により同項に規定する労働時間を延長することができる場合において、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者であって次の各号のいずれにも該当しないものが当該子を養育するために請求したときは、制限時間を超えて労働時間を延長してはならない。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない。」

小学校に入学する前の子を養育する従業員は、会社に対して、制限時間を超えて労働しないことを請求できることが定められています。

「制限時間」とは、法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を基準する時間外労働の時間のことで、1ヶ月に24時間、1年に150時間と定められています。

要するに、小学校に入学する前の子がいる従業員は、会社に「制限時間を超えて時間外労働をしません」と申し出ることができて、会社は事業の正常な運営を妨げる場合でない限り、応じないといけません。女性従業員、男性従業員ともに利用できます。

法定労働時間(1日8時間、1週40時間)が基準になりますので、例えば、1日7時間40分勤務など、会社ごとに定めている所定労働時間を基準とする残業時間(所定外労働の時間)とは異なる点に注意をする必要があります。

また、育児介護休業法(第18条第1項)によって、次のように規定されています。

「前条第1項・・・の規定は、要介護状態にある対象家族を介護する労働者について準用する。この場合において、同条第1項中「当該子を養育する」とあるのは「当該対象家族を介護する」と・・・読み替えるものとする。」

要介護状態の家族がいる従業員も同様に、制限時間(1ヶ月に24時間、1年に150時間)を超えて時間外労働をしないよう請求できることが定められています。

ただし、次の者については、請求を拒否できます。育児をする従業員、介護をする従業員ともに共通です。

  1. 入社して1年未満の者
  2. 1週間の所定労働日数が2日以下の者

育児介護休業に関連する制度の適用を除外する場合は、労使協定の締結が条件になっている制度がありますが、時間外労働の制限については、労使協定の締結は条件になっていません。就業規則、育児介護休業規程に適用を除外することを規定していれば、適用を除外できます。

これに該当しない場合は、パートタイマー、アルバイト、嘱託従業員等であっても、制限時間を超えて時間外労働をしないよう請求できます。

なお、期間を定めて雇用した従業員については、適用を除外することが認められていませんので、請求してきたときは応じる必要があります。

育児をする従業員が時間外労働の制限を請求できる期間は、上の規定のとおり、育児介護休業法で「小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者」が対象とされていますので、子が小学校に入学するまでです。

一方、介護をする従業員が時間外労働の制限を請求できる期間については、特に規定されていません。「要介護状態にある対象家族を介護する労働者」が対象とされていますので、要介護状態の家族がいる間はずっと請求できます。

そして、「事業の正常な運営を妨げる場合」は請求を拒否できますが、「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当するかどうかは、その従業員が担当する業務の内容、業務の繁閑、代替要員の配置の難易等の事情を考慮して判断することになっています。

また、時間外労働の制限を請求できるのは、「小学校に入学する前の子を養育する従業員」、「要介護状態の家族がいる従業員」ですので、請求してきた従業員に対して、小学校に入学する前の子がいること、家族が要介護状態であることを証明する書類の提出を求めることができます。

育児や介護をする従業員はこの制度とは別に、残業をしない「残業(所定外労働)の免除」を請求することも可能です。

ここで解説しています「時間外労働の制限」は一定時間までは残業時間を許容する制度、「残業(所定外労働)の免除」は残業をしない制度という違いがあります。

どちらも残業時間を減らして育児や介護を行いやすくするための制度ですが、制度の内容が違いますので、「時間外労働の制限」と「残業(所定外労働)の免除」の期間は重複しないようにする必要があります。

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