所定外労働の制限(残業の免除)

所定外労働の制限(残業の免除)

  • 育児や介護をする従業員が申し出たときは、残業を免除していますか?
  • 一定の要件をクリアする従業員が申し出たときは、育児介護休業法によって、残業(所定外労働)をさせることが禁止されています。

【解説】

育児介護休業法(第16条の8第1項)によって、次のように規定されています。

「事業主は、3歳に満たない子を養育する労働者であって、当該事業主と当該労働者が雇用される事業所の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、その事業所の労働者の過半数で組織する労働組合がないときはその労働者の過半数を代表する者との書面による協定で、次に掲げる労働者のうちこの項本文の規定による請求をできないものとして定められた労働者に該当しない労働者が当該子を養育するために請求した場合においては、所定労働時間を超えて労働させてはならない。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない。」

3歳未満の子を養育する従業員は、会社に対して、所定労働時間を超えて労働しないことを請求できることが定められています。

要するに、3歳未満の子がいる従業員は、会社に「残業はしません」と申し出ることができて、会社は事業の正常な運営を妨げる場合でない限り、応じないといけません。女性従業員、男性従業員ともに利用できます。

また、育児介護休業法(第16条の9第1項)によって、次のように規定されています。

「前条第1項・・・の規定は、要介護状態にある対象家族を介護する労働者について準用する。この場合において、同条第1項中「当該子を養育する」とあるのは「当該対象家族を介護する」と・・・読み替えるものとする。」

要介護状態の家族がいる従業員も同様に、残業(所定労働時間を超える労働)をしないよう請求できることが定められています。

ただし、従業員の過半数代表者(又は過半数労働組合)と労使協定を締結したときは、次の者については、請求を拒否できます。育児をする従業員、介護をする従業員ともに共通です。

  1. 入社して1年未満の者
  2. 1週間の所定労働日数が2日以下の者

これに該当しない場合は、パートタイマー、アルバイト、嘱託従業員等であっても、残業(所定労働時間を超える労働)をしないよう請求できます。

なお、期間を定めて雇用した従業員については、適用を除外することが認められていませんので、請求してきたときは応じる必要があります。

育児をする従業員が残業(所定外労働)の免除を請求できる期間は、上の規定のとおり、育児介護休業法で「3歳に満たない子を養育する労働者」が対象とされていますので、子が3歳になるまでです。

一方、介護をする従業員が残業(所定外労働)の免除を請求できる期間については、特に規定されていません。「要介護状態にある対象家族を介護する労働者」が対象とされていますので、要介護状態の家族がいる間はずっと請求できます。

そして、「事業の正常な運営を妨げる場合」は請求を拒否できますが、「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当するかどうかは、その従業員が担当する業務の内容、業務の繁閑、代替要員の配置の難易等の事情を考慮して判断することになっています。

また、残業(所定外労働)の免除を請求できるのは、「3歳未満の子を養育する従業員」、「要介護状態の家族がいる従業員」ですので、請求してきた従業員に対して、3歳未満の子がいること、家族が要介護状態であることを証明する書類の提出を求めることができます。

育児や介護をする従業員はこの制度とは別に、残業時間を一定の範囲内とする「時間外労働の制限」を請求することも可能です。

ここで解説しています「残業(所定外労働)の免除」は残業をしない制度、「時間外労働の制限」は一定時間までは残業時間を許容する制度という違いがあります。

どちらも残業時間を減らして育児や介護を行いやすくするための制度ですが、制度の内容が違いますので、「残業(所定外労働)の免除」と「時間外労働の制限」の期間は重複しないようにする必要があります。

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