年次有給休暇の消化の順番
年次有給休暇の消化の順番
- 従業員が年次有給休暇を取得したときに、当年度に付与した年次有給休暇、又は、前年度に付与した年次有給休暇、のどちらから消化していますか?
- どちらの年次有給休暇から消化するかは、労働基準法では決まっていません。就業規則で決めることができます。
【解説】
- 当年度に付与した年次有給休暇
- 前年度に付与した年次有給休暇
「どちらから消化しても同じではないか?」と思われることがあります。実際に意識していない会社も多いです。
例えば、勤続6.5年以上の従業員がいて、2019年1月1日に20日分の年次有給休暇、翌年の2020年1月1日に更に20日分の年次有給休暇を付与したとします。
仮に、これまで年次有給休暇を取得しなかったとすると、2020年1月1日の時点では、
- 当年度(2020年1月1日)に付与した年次有給休暇が20日分
- 前年度(2019年1月1日)に付与して、繰り越された年次有給休暇が20日分
が残っていることになります。
そして、2020年1月1日から1年の間に5日の年次有給休暇を取得して、【1.当年度(2020年)に付与した年次有給休暇】から消化すると、1年後の2021年1月1日の時点では、
- 新しく当年度(2021年)に付与した年次有給休暇が20日分
- 前年度(2020年)に付与して、繰り越された年次有給休暇が15日分
の合計35日分が残っていることになります。
一方、2020年1月1日から1年の間に5日の年次有給休暇を取得して、【2.前年度(2019年)に付与した年次有給休暇】から消化すると、1年後の2021年1月1日の時点では、
- 新しく当年度(2021年)に付与した年次有給休暇が20日分
- 前年度(2020年)に付与して、繰り越された年次有給休暇が20日分
の合計40日分が残っていることになります。前年度(2019年)分から消化すると、当年度(2020年)分は未消化のままですので、当年度(2020年)分は全部が繰り越されます。
従業員にとっては、前年度分から消化した方が年次有給休暇を多く利用できることになります。会社にとっては、当年度分から消化した方が年次有給休暇の取得日数を抑えることができます。
ただし、年次有給休暇の取得率が毎年100%以内で継続している場合(当年度に付与した日数の範囲内で取得している場合)は、従業員は自由に利用できますので、どちらから消化しても問題になることはありません。
年次有給休暇の残日数が問題になるのは、従業員が退職したり、大きな病気を患ったりした場合です。
「有給休暇は古い方(前年度分)から消化するものだ」と思い込んでいる従業員が多いです。そう思っている経営者も多いです。お互いがそう思っていれば問題になることはありませんので、前年度分(古い方)から消化する方法が望ましいです。
労働基準法では、前年度分か当年度分か、どちらから消化するかは決まっていません。就業規則で指定することができます。
前年度分から消化する場合は、従業員とトラブルになる可能性はありませんので、就業規則で定めなくても構いませんし、確認の意味で前年度分から消化することを記載しても構いません。
就業規則に記載がないと従業員は前年度分から消化するものと考えますので、当年度分から消化する場合はトラブルを予防するために、あらかじめ就業規則に当年度分から消化することを定めておく必要があります。
ただし、これまでの慣行で前年度分から消化してきた場合は、その慣行が優先されますので、当年度分から消化するように変更する場合は、従業員に説明をして同意を得る必要があります。
もっと詳しく
- 労働基準法 第115条<時効>【なるほど労働基準法】
- 労働基準法 第39条第2項<有給休暇の日数>【なるほど労働基準法】
- 労働基準法 第39条第3項<パートタイマーの有給休暇>【なるほど労働基準法】
- 労働関係の時効【労務管理の知恵袋】
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