健康診断の結果と採用選考の合否判定

健康診断の結果と採用選考の合否判定

  • 応募者の段階で健康診断を実施して、その結果を採用選考の合否判定に使っていませんか?
  • 就職差別(採用差別)に繋がる恐れがありますので、使うべきではありません。

【解説】

労働安全衛生規則(厚生労働省令)によって、次のように規定されています。

「事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。ただし、医師による健康診断を受けた後、3月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない。

  1. 既往歴及び業務歴の調査
  2. 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
  3. 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
  4. 胸部エックス線検査
  5. 血圧の測定
  6. 血色素量及び赤血球数の検査
  7. 血清グルタミックオキサロアセチックトランスアミナーゼ(GOT)、血清グルタミックピルビックトランスアミナーゼ(GPT)及びガンマ―グルタミルトランスペプチダーゼ(γ―GTP)の検査
  8. 低比重リポ蛋たん白コレステロール(LDLコレステロール)、高比重リポ蛋たん白コレステロール(HDLコレステロール)及び血清トリグリセライドの量の検査
  9. 血糖検査
  10. 尿中の糖及び蛋たん白の有無の検査
  11. 心電図検査」

「雇入時の健康診断」と呼ばれる規定で、従業員を採用するときは健康診断を実施することが義務付けられています。ただし、健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、健康診断の実施を省略することが認められています。

この規定は、雇い入れた後の適正配置や入社後の健康管理に役立てることを目的として設けられたもので、採用選考の合否判定に利用することは想定されていません。

採用選考の合否を決定する前に、健康診断の結果を証明する書面を提出させたり、健康診断を実施していると、「就職差別(採用差別)をされた!」と指摘される恐れがあります。

採用選考の合否判定は、応募者の能力や適性を見極めて行うべきで、その見極めに必要でない事項については、変に疑われる原因になりますので、把握するべきではありません。

また、健康情報は重要な個人情報です。採用を決定した者については、労働安全衛生規則(労働安全衛生法)で定められていることですので、健康情報(個人情報)を取得する理由や利用目的が明らかです。

しかし、応募者の段階の者については、「雇入時の健康診断」の規定は適用されませんので、会社が健康情報(個人情報)を取得する必要性がありません。個人情報の取扱いに関してもトラブルの原因になりますので、無暗に健康情報を把握することは控えるべきです。

ただし、健康上の問題を一切確認してはいけないということではありません。募集している業務に関連して、必要性があれば、応募者に健康上の問題があるかどうか聴くことは可能です。

例えば、自動車を運転する機会がある業務で募集している場合は、採用面接の際に「てんかん等、自動車の運転に支障がある持病はないですか?」と確認することは構いません。募集している業務に関連することで、万一、交通事故が生じる危険性を考えると、確認するべきです。

その他にも、募集している業務を遂行する上で、安全衛生上の問題が生じる恐れがある場合は、それぞれの業務の必要性に応じて、確認をしても問題はありません。

「念のために聴いておこうか」と考えていると問題になる恐れがありますので、募集している業務ごとに確認事項を整理しておくと良いでしょう。

また、入社した後の業務の配分を計画したりするために、出勤率を確認したい場合は、「過去1年間で何日ぐらい会社を休みましたか?」「休んだ理由は?」と聴くことは可能です。

就職差別(採用差別)に繋がる恐れがありますので、採用を決定するまでは、健康診断の結果を証明する書面を提出させたり、健康診断を実施するべきではありません。

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