就職差別の禁止

就職差別の禁止

  • 採用面接をする際に、就職差別と受け取られるような質問をしていませんか?
  • 採用面接をするときは、「業務に関する適性や能力を把握すること」を中心に考えて質問するようにしてください。

【解説】

職業安定法(第5条の4)によって、次のように規定されています。

公共職業安定所、特定地方公共団体、職業紹介事業者及び求人者、労働者の募集を行う者及び募集受託者並びに労働者供給事業者及び労働者供給を受けようとする者は、それぞれ、その業務に関し、求職者、募集に応じて労働者になろうとする者又は供給される労働者の個人情報を収集し、保管し、又は使用するに当たっては、その業務の目的の達成に必要な範囲内で求職者等の個人情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない。ただし、本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない。

従業員を募集している会社が、応募者の個人情報を収集する場合は、その業務を遂行するために“必要な範囲内で”個人情報を収集しないといけません。

反対から読むと、業務を遂行するために“必要な範囲を超えて”、応募者の個人情報を収集することが禁止されています。

また、職業安定法の指針(厚生労働省告示)によって、次のように定められています。なお、ここでは「職業紹介事業者等」と記載されていますが、これには従業員を募集している会社も含みます。

職業紹介事業者等は、その業務の目的の範囲内で求職者等の個人情報を収集することとし、次に掲げる個人情報を収集してはならないこと。ただし、特別な職業上の必要性が存在することその他業務の目的の達成に必要不可欠であって、収集目的を示して本人から収集する場合はこの限りでないこと。

  1. 人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項
  2. 思想及び信条
  3. 労働組合への加入状況

差別の原因となる恐れがある個人情報については、収集することが禁止されています。本来、応募者の中から誰を採用するかは会社の自由です。しかし、就職差別と受け取られるような質問はするべきではありません。

会社としては、「当社が求める能力に達していない」と判断して不採用を決定したとしても、会社が不用意な質問をしていると、「就職差別を受けた」と言われて、トラブルに巻き込まれるかもしれません。

採用面接をするときは、「業務に関する適性や能力を把握すること」を中心に考えて、質問をしてください。例えば、次のような質問をしても、応募者の適性や能力を把握することはできません。就職差別に繋がる恐れがあります。

【本人に責任のない事項】

【思想信条にかかわる事項】

これらの内容については一切触れてはいけないということではありません。業務に関連することであれば、確認することは可能です。例えば、時間外勤務や休日勤務が頻繁にある会社では、それに応じられるかどうかは選考基準の1つになります。

就業規則で定めていれば、原則的には、会社が一方的に時間外勤務や休日勤務を命じることができますが、育児中の子がいたり、介護を必要とする家族がいたりする者については、会社は配慮することが望ましいです。

また、育児介護休業法に基づいて、要件を満たしている者については、会社は時間外勤務や休日勤務を命じることができません。

時間外勤務や休日勤務に応じられない原因として、家族の状況が想定されますので、その確認のために必要な範囲内で質問をすることは構いません。ただし、そのような場合であっても、例示したような「家族の職業、収入、学歴、健康など」は業務に関連しませんので、質問をする必要性はないでしょう。

業務に関する適性や能力を把握するために、あらかじめ選考基準と質問内容を決めておいて、それに沿って採用面接を進めるようにすれば安心です。チェックリストを作っておけば、確認事項の聞き漏らしを防止できます。

また、採用面接の開始前や終了後に、緊張している応募者の気持ちを和らげようとして、世間話をすることがあります。そのときに、「家族に関すること」が話題になって、就職差別に繋がるような質問をすることがあります。採用面接の出席者に対して、前もって注意しておいた方が良いです。

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