労働条件に関する文書の交付
労働条件に関する文書の交付
- パートタイマーや契約従業員、嘱託従業員を採用する場合は、本人に「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」「相談窓口」を明示していますか?
- パートタイム・有期雇用労働法によって、これらの事項について、採用時に文書を交付して明示することが義務付けられています。
【解説】
パートタイム・有期雇用労働法(第6条第1項)によって、次のように規定されています。
「事業主は、短時間・有期雇用労働者を雇い入れたときは、速やかに、当該短時間・有期雇用労働者に対して、労働条件に関する事項のうち労働基準法第15条第1項に規定する厚生労働省令で定める事項以外のものであって厚生労働省令で定めるものを文書の交付その他厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。」
会社が短時間労働者や有期雇用労働者を採用するときは、「厚生労働省令で定めるもの」について、文書を交付して明示することが義務付けられています。
ところで、従来の法律は、正社員より労働時間が短い「短時間労働者」(パートタイマー等)を対象としていたのですが、法律が改正されて、期間を定めて雇用する「有期雇用労働者」(契約従業員や嘱託従業員等)も対象に追加されました。
改正に伴って、法律の正式名称は「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」から「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」に、通称も「パートタイム労働法」から「パートタイム・有期雇用労働法」に改められました。
そして、上のパートタイム・有期雇用労働法(第6条第1項)の規定では、短時間労働者や有期雇用労働者に対して、労働基準法第15条第1項で定める事項以外のものを明示することとされています。
労働基準法(第15条第1項)によって、従業員を採用するときは、次の労働条件について、書面(雇用契約書や労働条件通知書)を交付して明示することが義務付けられています。労使間の思い違いを防止するための規定です。
- 労働契約の期間に関する事項
- 就業場所及び業務内容に関する事項
- 労働時間に関する事項
- 賃金に関する事項
- 退職に関する事項
労働基準法は、短時間労働者や有期雇用労働者にも適用されますので、これらの事項を明示した上で、更に「厚生労働省令で定めるもの」についても明示する必要があります。
この「厚生労働省令で定めるもの」については、厚生労働省令(施行規則)で、次のように規定されています。
「法第6条第1項の厚生労働省令で定める短時間・有期雇用労働者に対して明示しなければならない労働条件に関する事項は、次に掲げるものとする。
- 昇給の有無
- 退職金の有無
- 賞与の有無
- 短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口」
これらの事項については、正社員だけが優遇されて、正社員と比べて見劣りがするパートタイマーや契約従業員等が不満を持ってトラブルになるケースが多いです。そのようなトラブルを防止するために、採用時にこれらの取扱いを明確にして、本人が納得した上で入社することにしています。
採用時の労働条件は、原則的には書面で明示することとされていますが、本人が希望した場合は電子メール等で明示する方法も認められています。口頭による明示は認められていません。
「1.昇給の有無」については、例えば、1年間の期間を定めて雇用する場合に、その期間内に昇給を予定していなければ(雇用契約を更新する際に昇給する可能性があったとしても)、昇給は「なし」と記載します。
「2.退職金の有無」については、会社に退職金規程がなかったり、退職金規程があっても適用対象外となっている場合は、「なし」と記載します。
「3.賞与の有無」については、必ず支給する場合は「あり」と記載します。実際の取扱いに合わせて、「あり(業績等によって支給しない場合あり)」、「なし(業績等によって支給する場合あり)」と記載する方法もあります。また、寸志程度を支給する場合も、過度な期待をさせないように「なし」と記載した方が良いです。
「4.相談窓口」については、他の事項と性質が異なりますが、相談窓口となる部署や担当者を明示する必要があります。
相談窓口(相談のための体制の整備)については、パートタイム・有期雇用労働法(第16条)によって、次のように規定されています。
「事業主は、短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項に関し、その雇用する短時間・有期雇用労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備しなければならない。」
会社は相談窓口を設置して、短時間労働者や有期雇用労働者からの相談に応じることが義務付けられています。
短時間労働者や有期雇用労働者については、「正社員と待遇が違う!」「不公平だ!」というトラブルが生じやすいです。問題が大きくなる前に会社に相談してもらって、トラブルを予防することを目的とした規定です。
なお、有期雇用労働者について、雇用契約を更新する場合は、その都度、雇用契約書や労働条件通知書を作成して、労働条件を明示する必要があります。