有期労働契約の更新基準の明示
有期労働契約の更新基準の明示
- 期間を定めて雇用するときは、更新する可能性の有無、更新する可能性がある場合はその判断基準、を従業員に明示していますか?
- 労働基準法によって、期間を定めて雇用するときは、会社は採用時に、「期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項」を明示することが義務付けられています。
【解説】
パートタイマーや契約従業員等を、1年間や6ヶ月間など、期間を定めて雇用するケースがあります。
有期労働契約と言いますが、契約期間が満了したときに、会社が更新しないこと(雇い止め)を従業員に通知してトラブルになることがあります。
そのようなトラブルは、採用時の契約内容が曖昧な会社で生じやすいです。法律を適正に遵守していれば、そのようなトラブルは予防できます。
労働基準法(第15条)により、会社は採用時に、従業員に労働条件(賃金、労働時間など)を書面で明示することが義務付けられています。
明示が義務付けられている労働条件は、具体的には労働基準法施行規則で定められていて、有期労働契約を更新する可能性がある場合は、「期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項」が挙げられています。
まず、労働契約の更新の有無に関しては、次の2通りが考えられます。
- 更新しない
- 更新する場合がある
最初から、「更新しない」として、実際に更新しなければトラブルになることは考えにくいです。この場合は更新しないことが前提ですので、更新する場合の基準は不要です。
「自動的に更新する」方法もありますが、その場合は、期間を定めない雇用契約(無期労働契約)とほぼ同じになりますので、有期労働契約とする意味がないように思います。
次に、労働契約を更新する場合の基準に関しては、次のような内容が通達(基発1026第2号)で例示されています。
- 契約期間満了時の業務量により判断する
- 従業員の勤務成績、態度により判断する
- 従業員の能力により判断する
- 会社の経営状況により判断する
- 従事している業務の進捗状況により判断する
通達では、更新の基準は、契約期間が満了したときに更新されるかどうか、を本人がある程度予見できる内容であることを要するとされています。
トラブルの大半は、会社と従業員がお互いに都合の良いように思い込んでいることが原因です。
例示した内容を雇用契約書や労働条件通知書に記載して従業員に明示したとしても、それだけでは本人が予見することは難しいのではないでしょうか。
契約期間中に労働契約を更新しない可能性が出てきたときは、勤務成績、態度、能力が今のままなら更新できないこと、どうすれば更新できるかを本人に説明して、更新を期待させないようにすることが大事です。繰り返し説明をすればより効果的です。
業務量や経営状況については、個人ではどうすることもできないかもしれませんが、できれば数ヶ月前に説明会を開催する等して、更新される見込みが薄いと認識させておくべきです。
また、正社員として採用する前に、試しで雇用する(トライアル期間を設定する)場合は、「労働契約は更新しない。ただし、本人が希望し、会社が特別に認めたときは新たに正社員として採用することがある。」とする方法もあります。このような方法を繰り返すことは認められませんが、初回だけなら有効です。
もっと詳しく
- 労働基準法 第15条<労働条件の明示>【なるほど労働基準法】
- 労働基準法 第14条第2項<有期労働契約に関する基準>【なるほど労働基準法】
- 労働基準法 第14条第3項<有期労働契約に関する助言指導>【なるほど労働基準法】
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