年次有給休暇の不利益取扱い

年次有給休暇の不利益取扱い

  • 年次有給休暇を取得した従業員の賞与を減額したり、年次有給休暇を取得したことを理由にして、不利益な取扱いをしていませんか?
  • 年次有給休暇を取得した従業員に対して、賃金の減額など、不利益な取扱いをすることが労働基準法で禁止されています。

【解説】

労働基準法(第136条)によって、次のように規定されています。

「使用者は、第39条第1項から第4項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。」

ここでは「不利益な取扱いをしてはならない」ではなく、「不利益な取扱いをしないようにしなければならない」と遠回しな表現になっています。

これは不利益な取扱いを一刀両断に禁止するのではなく、努力義務を定めた規定と考えられています。また、この規定に違反したとしても、罰則は定められていません。

例えば、精皆勤手当を支給したり、賞与の支給額を決定したりする際に、年次有給休暇を取得した日を欠勤したものとみなすことは、不利益な取扱いに該当すると考えられています。

通達でも、従業員の権利として年次有給休暇の取得が認められていることから、会社は取得を抑制する取扱いをしないようにしなければならないとされています。会社がそのような取扱いをしていると、労働基準監督署による是正指導の対象になります。

労働基準法第136条は努力義務を定めた規定ですが、従業員が受ける不利益の程度(減額等の程度)によって、その取扱いが有効か無効か、判断が分かれます。

最終的には裁判で判断されるのですが、皆勤手当を支給している会社で、年次有給休暇を取得した日を欠勤したものとして取り扱っていたケースでは、皆勤手当が相対的に少額で、事実上、年次有給休暇の取得を抑止する力は大きくなかったとして、会社の取扱いを有効と判断した裁判例があります。

しかし、この判断を予測することは難しいので、会社としては年次有給休暇を取得したことを理由として、精皆勤手当や賞与を減額するべきではありません。年次有給休暇の取得の抑制に繋がるような取扱いは避けるべきです。

年次有給休暇を取得しなかった従業員の賞与を増額する取扱いも同じです。年次有給休暇を取得した従業員が、相対的に不利益を受けることになります。

なお、年次有給休暇の取得とは切り離して、目標の達成度や貢献度、能力、協調性等を評価して、賞与の支給額や昇給の額を決定することは可能です。

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