年俸制と残業手当(割増賃金)
年俸制と残業手当(割増賃金)
- 年俸制の従業員についても、時間外勤務をしたときは時間外勤務手当(割増賃金)を支払っていますか?
- 年俸制の従業員であっても、時間外勤務手当(割増賃金)に関する規定は適用されますので、労働基準法に基づいて支払わないといけません。
【解説】
労働基準法には、年俸制に関する規定はありません。つまり、年俸制を採用していても、特別扱いはされないということです。
年俸制というのは単に賃金の決定方法の1つであって、年俸制であったとしても、月額を定めているはずです。労働基準法上、年俸制は月給制として取り扱われます。
したがって、1日8時間又は1週40時間の法定労働時間を超えて勤務したときは、通常の従業員と同じように、1.25倍の時間外勤務手当を支払う義務があります。休日勤務手当や深夜勤務手当についても同じです。
労働基準法(第37条)「使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。・・・」
そして、「年俸には残業手当も含めているから、別途で支払わなくても良い」と考えている会社があります。
正しく運用していれば問題はないのですが、間違って運用している(違法になっている)ケースがあります。
- 年俸(月額)の内、残業手当(割増賃金)として支払っている金額を具体的に明示している必要があります。
- 年俸(月額)には定額の残業手当(割増賃金)を含むこと、及び、その内訳について、従業員本人から同意を得る必要があります。
- 実際の残業時間に基づいて計算した残業手当の額が、定額で支払っている残業手当の額を超えたときは、超えた差額を支払う必要があります。また、従業員の労働時間を適正に把握することも義務付けられています。
- 最低賃金をクリアしている必要があります。なお、最低賃金の計算には、残業手当(割増賃金)は含みません。
- 割増賃金の取扱いについて、就業規則(賃金規程)に記載する必要があります。
これらの全ての要件を満たしていないと、違法状態になっている恐れがあります。結果的に、全く残業手当を支払っていなかったと判断され、2年前までさかのぼって支払うよう求められるかもしれません。
もっと詳しく
- 労働基準法 第37条<残業手当>【なるほど労働基準法】
- 労働基準法 第37条第4項<深夜労働手当>【なるほど労働基準法】
- 年俸制の誤解【労務管理の知恵袋】
- 定額の残業手当【労務管理の知恵袋】
- 管理監督者とは?【労務管理の知恵袋】
- 最低賃金法【労務管理の知恵袋】
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