年俸制の残業手当(割増賃金)支払い義務
年俸制の残業手当(割増賃金)支払い義務
- 年俸制の従業員についても、時間外労働をしたときは、時間外勤務手当(割増賃金)を支払っていますか?
- 年俸制の従業員であっても、時間外勤務手当(割増賃金)の規定は適用されますので、労働基準法に基づいて支払う必要があります。
【解説】
労働基準法には、年俸制に関する規定はありません。年俸制を採用していても、特別扱いはされないということです。
年俸制は賃金の決定方法の1つで、年俸制の従業員にも毎月一定額を支給しているはずですので、労働基準法上、年俸制は月給制(月によって定められた賃金)として取り扱われます。
したがって、年俸制の従業員にも、次の労働基準法(第37条)の規定が適用されます。
通常の従業員と同様に、時間外労働、休日労働、深夜労働をしたときは、それぞれ割増賃金を支払うことが義務付けられています。
そして、「年俸には残業手当(割増賃金)を含んでいるから、別に支払わなくても良い」と考えている会社があります。正しく運用していれば問題ありませんが、間違って運用しているケースがあります。
残業手当(割増賃金)込みで年俸を支払う場合は、次の手順を踏んで各要件を満たしている必要があります。
- 年俸(月額)の内、残業手当(割増賃金)として支払っている額を具体的に明示する
- 年俸(月額)には定額の残業手当(割増賃金)を含んでいること、及び、その内訳について、個別に従業員から同意を得る
- 割増賃金の取扱いについて、就業規則(賃金規程)に記載する
- 実際の残業時間に基づいて計算した残業手当の額が、定額で支払っている残業手当の額を超えたときは、超えた差額を支払う(その前提として、従業員の労働時間を適正に把握する必要があります)
1つでも満たしていない事項がある場合は、年俸に残業手当(割増賃金)を含んでいるという取扱いが否定されます。結果的に、残業手当(割増賃金)を支払っていなかったと判断されて、3年前までさかのぼって残業手当(割増賃金)を支払うよう求められる恐れがあります。
また、残業手当(割増賃金)を除いた賃金で計算をして、最低賃金をクリアしていることを確認する必要があります。

執筆者:社会保険労務士 木下貴雄【 登録番号 第27020179号 】
就業規則を専門とする社会保険労務士です。中小零細企業の就業規則に関する悩みは全て解決いたします。日々の業務やホームページでは、分かりやすく伝えることを心掛けています。
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