年俸制の割増賃金の算定基礎賃金

年俸制の割増賃金の算定基礎賃金

  • 賃金が年俸制で、賞与の支給額が予め確定している場合は、賞与の支給額を割増賃金の基礎となる賃金に含めて計算していますか?
  • 賞与の支給額が予め確定している場合は、労働基準法上の“賞与”に該当しませんので、賞与として支給する額も、割増賃金の基礎となる賃金に含めて計算しないといけません。

【解説】

年俸制を採用している場合であっても、労働基準法はそのまま適用されますので、従業員が1日8時間又は1週40時間を超える時間外労働をしたときは、会社はその時間に対して割増賃金(時間外勤務手当)を支払う義務があります。休日勤務手当、深夜勤務手当についても同じです。

また、年俸制を採用している場合であっても、賃金は毎月支払う必要があります。賞与の支給については、法律上の義務ではありませんので、各企業によって支給の有無や支給額の決定方法が異なります。

例えば、年俸の15分の1を賃金として毎月支給して、年俸の15分の3を賞与として支給するようなケースがあります。

そして、割増賃金は基礎となる賃金を基準にして、時間外勤務手当は125%、休日勤務手当は135%、深夜勤務手当は25%の割増率で支給することになっています。

割増賃金の基礎となる賃金から、次の手当や賃金は除外することが認められています。

  1. 家族手当
  2. 通勤手当
  3. 別居手当
  4. 子女教育手当
  5. 住宅手当
  6. 臨時に支払われた賃金
  7. 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

「1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金」として、賞与があります。労働基準法上、賞与とは、支給額が予め確定していないものと定義されています。これは名称ではなく、実態で判断されます。

「賞与とは、定期又は臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであつて、その支給額が予め確定されてゐないものを云ふこと。定期的に支給され、且その支給額が確定してゐるものは、名称の如何にかゝはらず、これを賞与とはみなさないこと。」(昭和22年9月13日 発基第17号)

そのため、年俸の15分の3のように支給額が予め確定している場合は、労働基準法上の賞与とみなされませんので、割増賃金の基礎となる賃金に含めて計算しないといけません。

したがって、その場合は、年俸の15分の1ではなく、年俸の12分の1を賃金(月額)として、1ヶ月平均所定労働時間数で割って、1時間当たりの基礎となる賃金を算出することになります。

一方、賞与の支給額を予め確定しないで、年俸の15分の3を基準額として、業績や貢献度等に応じて変動して、その都度、支給額を決定している場合は、労働基準法上の賞与に該当します。

その場合は、割増賃金の基礎となる賃金から除外できますので、年俸の15分の1を賃金(月額)として計算できるようになります。

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