残業手当の受取拒否
残業手当の受取拒否
- 「残業手当はいらない」と言った従業員を信用して、無給で働かせていませんか?
- 従業員が「残業手当はいらない」と言ったとしても、残業時間に応じて残業手当を支払わないと、労働基準法違反になります。
【解説】
従業員と会社は、労働契約(雇用契約)の関係にあります。労働契約(雇用契約)も契約ですので、原則的に契約内容は、当事者間の合意によって自由に決められます。
しかし、人たるに値する生活を営むことができるように、労働基準法によって、労働条件の“最低基準”が定められています。
そのため、労働契約(雇用契約)は、その最低基準を上回る内容にしないといけません。
労働基準法で定められている最低基準に達しない労働契約(雇用契約)は、労働基準法違反になります。また、その違法となった部分は無効になって、強制的に労働基準法の最低基準が適用されます。
そして、労働基準法には、残業時間に応じて残業手当を支払う義務があることが規定されています。
従業員が「残業手当はいらない」と言って受取を拒否したとしても、労働基準法は適用されます。会社から無理やり言わされた場合はもちろんですが、本心でそう言った場合も同じです。
したがって、従業員の発言を受け入れて残業手当を支払わないと、会社は労働基準法違反をしたことになり、更に、2年前までさかのぼって残業手当を支払わされることになります。
これは残業手当(割増賃金)に限った話ではありません。例えば、最低賃金、休日、休憩など、他の労働条件についても同じことが言えます。
従業員が会社に有利な申出をしてきたとしても、会社は安易に「良い従業員だ」と思ってはいけません。労働基準法の内容を正しく理解して、対応する必要があります。