解雇の予告と年次有給休暇の請求
解雇の予告と年次有給休暇の請求
解雇を通知した従業員が、「残っている年次有給休暇を全部使いたい」と言ってきました。会社はどのように対応すれば良いでしょうか?
従業員が取得日を指定して年次有給休暇を請求したときは、原則的には、会社は拒否できません。
労働基準法(第20条)によって、会社が従業員を解雇しようとするときは、30日以上前に予告をすることが義務付けられています。30日以上前に予告をしないで、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う方法も認められています。
また、労働基準法(第39条第5項)によって、従業員が請求した時季に年次有給休暇を与えることが義務付けられています。
そして、労働基準法(第39条第9項)によって、年次有給休暇を取得した日については、通常の賃金を支払うことが義務付けられています。
要するに、年次有給休暇とは、所定労働日(出勤する義務がある日)の勤務を免除して、賃金を支払うという制度です。賃金を支払うだけではなく、所定労働日の勤務を免除することがセットになっています。
そのため、例えば、20日分の年次有給休暇が未消化で残っているとしても、丸々20日分の賃金を請求できる権利があるということにはなりません。
解雇日(退職日)まで2週間(14日)あって、その間の所定労働日数が10日とすると、10日分は年次有給休暇を取得できますが、休日の4日は年次有給休暇を取得できません。また、解雇日(退職日)以降は、所定労働日がありませんので、その時点で未消化分の年次有給休暇は無効になります。
解雇の予告をしないで、30日分の平均賃金(解雇予告手当)を支払って解雇したときは、即日解雇になりますので、年次有給休暇を取得できる日がありません。当日に未消化の年次有給休暇は無効、権利が消滅します。
30日分の平均賃金(解雇予告手当)を支払うことによって、勤務したものとみなして賃金を支払ったことになりますので、年次有給休暇を取得したと考えることもできます。
解雇(退職)に伴って、無効になる未消化の年次有給休暇について、従業員が買取りを求めてきたとしても、会社に応じる義務はありません。応じるかどうかは会社の自由です。解雇の理解を得る(確認書を作成する)場合など、交換条件の1つとして買い取るケースもあります。
従業員が10日分の年次有給休暇の取得を請求したときは、会社が時季変更権を行使できる状況(事業の正常な運営を妨げる場合)でなければ、それに応じる必要があります。年次有給休暇は、労働基準法で認められた権利ですので、会社は拒否することはできません。