役員(取締役)の産休期間の社会保険料の免除
役員(取締役)の産休期間の社会保険料の免除
従業員が出産して、産前産後休業及び育児休業を取得する期間については、社会保険料が免除されますが、役員が出産して休業する場合は免除されないのでしょうか?
役員(取締役)が産前産後休業を取得する期間の社会保険料は免除されますが、育児休業を取得する期間の社会保険料は免除されません。
社会保険(厚生年金保険及び健康保険)については、役員(取締役等)も一般の従業員と同様に、”被保険者”として健康保険法及び厚生年金保険法が適用されます。
被保険者が産前産後休業を取得した場合の健康保険料の免除については、健康保険法(第159条の3)によって、次のように規定されています。
産前産後休業をしている被保険者が使用される事業所の事業主が、厚生労働省令で定めるところにより保険者等に申出をしたときは、その産前産後休業を開始した日の属する月からその産前産後休業が終了する日の翌日が属する月の前月までの期間、当該被保険者に関する保険料を徴収しない。
要約すると、産前産後休業を開始した月から終了した月の前月まで、保険料が免除されること(保険料を徴収しないこと)が規定されています。
また、健康保険法(第43条の3)によって、産前産後休業とは、「出産の日以前42日(多胎妊娠の場合においては、98日)から出産の日後56日までの間において労務に服さないこと」と定義されています。
したがって、役員(取締役)であっても、産前産後休業を取得した期間(産前6週間・産後8週間)は、健康保険料の納付が免除されます。厚生年金保険法にも、それぞれ同様の規定が設けられています。
そして、被保険者が育児休業を取得した場合の健康保険料の免除については、健康保険法(第159条)で、次のように規定されています。
育児休業等をしている被保険者が使用される事業所の事業主が、厚生労働省令で定めるところにより保険者等に申出をしたときは、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める月の当該被保険者に関する保険料は、徴収しない。
- その育児休業等を開始した日の属する月とその育児休業等が終了する日の翌日が属する月とが異なる場合 その育児休業等を開始した日の属する月からその育児休業等が終了する日の翌日が属する月の前月までの月
- その育児休業等を開始した日の属する月とその育児休業等が終了する日の翌日が属する月とが同一であり、かつ、当該月における育児休業等の日数として厚生労働省令で定めるところにより計算した日数が14日以上である場合 当該月
基本的には、第1号を適用して、育児休業を開始した月から終了した月の前月まで、保険料が免除されること(保険料を徴収しないこと)が規定されています。
なお、第2号では、同一月で育児休業が終了する場合は、休業日数が14日以上の場合に限って、保険料が免除されることが規定されています。
ここまでの構成は産前産後休業の場合と同じですが、健康保険法(第43条の2)によって、育児休業とは、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第2条第1号に規定する育児休業」等と定義されています。
要するに、育児介護休業法に基づいて取得する育児休業ということですが、育児介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)は”労働者”に適用される法律ですので、役員(取締役)には適用されません。
そのため、役員(取締役)が育児休業を取得したとしても、それは育児介護休業法に基づいて取得したものではありませんので、健康保険料は免除されません。厚生年金保険法にも、それぞれ同様の規定が設けられています。
仮に、産前産後休業が、労働基準法に基づいて取得する休業と定義されていれば、育児休業と同様に保険料免除の対象外になりますが、現状はそのような規定になっていません。
また、産前産後休業の期間について、賃金(役員報酬)が支払われない場合は、役員(取締役)にも、健康保険から出産手当金が支給されます。出産育児一時金も同様に支給されます。
しかし、育児休業期間について、一定の条件を満たしている場合は、雇用保険から育児休業給付金が支給されますが、支給対象者は雇用保険の被保険者です。役員(取締役)は雇用保険に加入できませんので、役員(取締役)は育児休業給付金を受給できません。
なお、兼務役員については、役員より労働者の身分の方に重点が置かれていれば(役員報酬より、労働者の身分に対して支給する賃金の方が高額であれば)、育児休業の取得が可能で、雇用保険にも加入できます。