正社員が兼業に応募

正社員が兼業に応募

土曜日と日曜日に限定してアルバイトを募集しようと考えているのですが、他社で正社員として勤務している方から応募があった場合は、採用しない方が良いでしょうか?

両方の勤務先の1週間の労働時間を合計して、40時間を超える場合は採用しない方が良いと思います。

最近は、働き方改革で残業時間(残業手当)が減少して、政府も兼業や副業を促進していますので、兼業や副業を希望する人が増えています。

そのため、短時間勤務のアルバイトやパートタイマーを募集すると、他社で正社員として勤務している方が応募してくることがあります。しかし、他社でフルタイムで勤務している人を採用する場合は、注意が必要です。

労働基準法(第37条)によって、1週間の労働時間が40時間(又は1日8時間)を超えたときは、超えた時間に対して割増賃金(125%の時間外勤務手当)を支払わないといけません。

これに関連して、労働基準法(第38条)によって、「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」と規定されています。つまり、別々の会社であっても、労働時間は通算することになっています。

この規定は、関連会社を設立して両方の会社で半分ずつ(例えば、1週30時間ずつ)勤務をさせて、割増賃金の支払いを免れようとする行為を阻止するために設けられたそうです。

そのような取扱いができないように、例えば、A社で1週40時間勤務をして、B社で同じ週に10時間勤務をしたときは、労働時間は通算して1週50時間になりますので、10時間分の割増賃金を支払わないといけません。

原則的には、後から採用した会社に割増賃金の支払い義務が生じます。B社だけで見ると1週10時間しか勤務していませんが、B社が後から採用したとすると、B社が10時間分の割増賃金を支払う必要があります。

したがって、アルバイトとして1,000円の時間給で採用したとしても、実際には1,250円の時間給で計算して賃金を支払わないといけません。想定していたより、人件費が割高になってしまいます。

なお、労働時間は通算することになっていますが、休日については、労働基準法に通算することを定めた規定はありません。したがって、A社で月曜日から金曜日まで、B社で土曜日と日曜日に勤務をしたとしても、A社B社ともに135%の休日勤務手当を支払う義務はありません。

次の注意点として、兼業・副業によって、過重労働の危険があります。

想定される労働時間(残業時間を含みます)を合計して、1ヶ月の総労働時間が215時間(1週40時間を超える時間外労働が月45時間)を超える場合は、36協定の限度時間を超えますので、採用してはいけません。

仮に、特別条項付きの36協定を締結したとしても、限度時間(時間外労働が月45時間)を超えられるのは、1年間で6ヶ月以内に制限されます。

また、時間外労働が月45時間を超えると過重労働による健康障害の可能性が表れ始めて、時間外労働が月80時間を超えると過重労働と認められます。過重労働が原因で、脳心臓疾患や精神疾患等を発症した場合は、損害賠償を請求されます。