診断書の提出命令
診断書の提出命令
従業員が「体調が悪いので、会社を休みたい」と言ってきた場合、診断書を提出させることはできますか?
年次有給休暇を取得する場合はできませんが、欠勤の場合は診断書の提出を求めることができます。
従業員が、「体調が悪いので、会社を休みたい」と言ってきた場合、「年次有給休暇を取得したい」という趣旨なのかどうかによって、会社の対応が異なります。まずは、それを確認する必要があります。
年次有給休暇は、一定期間継続勤務をした従業員に与えられる権利ですので、取得する理由は問いません。会社から従業員に対して、取得理由を明示するよう強制することはできません。
したがって、従業員の申出が、「年次有給休暇を取得したい」という趣旨だった場合は、診断書の提出を命じることは不可能です。
ただし、労働基準法上の年次有給休暇は、前日までに申請することがルールになっています。当日の年次有給休暇の申請については、会社の判断で取得の可否を決定できます。
体調不良が虚偽でないことを確認するために、従業員が当日に年次有給休暇を申請して、会社が必要と認めたときは、医療機関のレシートや診断書を提出させることがある旨を就業規則に規定している場合があります。
そのような場合は、就業規則に基づいて、医療機関のレシートや診断書の提出を求めることができます。求めに応じない従業員については、年次有給休暇の取得を認めないで、欠勤扱いにできます。
次に、年次有給休暇を使い切ったり、入社して半年以内で年次有給休暇が付与されていない従業員は、年次有給休暇を取得できません。また、年次有給休暇が付与されて残っていても、本人の意思で利用しないケースもあります。
そのような従業員が、「体調が悪いので、会社を休みたい」と言ってきたとすると、その日は欠勤扱いとして、無給で処理をすることになります。その場合に、診断書の提出を命じることができるのでしょうか。
そもそも労働契約とは、従業員が定められた日(定められた時間)に勤務をして、会社が賃金を支払うという契約です。
従業員は定められた日(定められた時間)に勤務をする義務があり、そのとおり勤務できない場合(欠勤や遅刻・早退)は契約違反になります。従業員はやむを得ない理由があって出勤できなかったことを、会社に説明しないといけません。「無給だから別に良いだろう」という考えは通用しません。
やむを得ない理由があったことを示す証拠として、診断書の提出を命じることができます。就業規則に、傷病を理由に欠勤をするときは、診断書を提出させることがある旨を規定していれば、従業員に説明しやすいです。
就業規則に規定しているにもかかわらず、従業員が診断書を提出しなければ、無断欠勤や業務命令違反として、懲戒処分の対象になることもあります。
また、会社は従業員の健康に配慮する義務があり、仕事が原因で症状が悪化すると会社の責任が問われます。体調不良の従業員を放置してはいけませんので、診断書の提出を求める根拠になります。
勤務を続けられるのか、続けられる場合はどの程度の勤務であれば支障がないのか、主治医に診断書を提出してもらって、それに基づいて業務の配分等を考えることになります。