転勤命令の拒否を理由とする解雇
転勤命令の拒否を理由とする解雇
転勤の辞令を出しましたが、従業員に拒否されました。どのように対応すれば良いでしょうか?
会社の転勤命令が有効と判断できる場合は、話し合うことが重要ですが、最終的には解雇を検討することになると思います。
通常は、就業規則に、「会社は業務の都合により必要がある場合は、配置転換又は転勤を命じることがある。」といった規定を設けていると思います。
就業規則の規定を根拠にして、原則的には、会社は従業員に対して、配置転換や転勤を一方的に命令することができます。従業員は、配置転換や転勤の命令に応じる義務があります。
また、労働契約法(第14条)によって、転勤ではありませんが、出向について、次のように規定されています。
就業規則に出向を命じることを定めている場合は、出向命令の必要性、対象者の選定方法、その他の事情に照らして、権利を濫用したものと認められなければ、出向命令は有効とすることが定められています。転勤についても同様に考えられます。
しかし、例外となるケースが3つあって、次のいずれかに該当する場合は、転勤命令は無効と判断されます。会社は転勤を強制・命令することはできません。
- 採用時に転勤がないことを約束していた従業員については、会社が一方的に転勤を命じることはできません。就業規則の内容より労働契約の内容(個別に行った約束)の方が従業員にとって有利な場合は、就業規則より労働契約の方が優先されます。この場合は、本人から同意を得る必要があって、同意しないことを理由にして、会社が解雇等の不利益な取扱いをすることは許されません。
- 家族に介護を必要とする者がいて世話できる者が従業員以外にいない等、転勤することによって、著しい負担を強いることになる場合は、従業員は転勤命令を拒否できます。実務上は、正式な転勤の辞令を出す前に、そのような事情がないか従業員に確認をするべきです。
- 嫌がらせや退職させることが目的で、業務上の必要性がない状況で転勤を命じた場合は、権利を濫用したものとして、転勤命令は無効になります。
就業規則に転勤に関する規定を設けていて、どれにも該当しなければ、会社が行った転勤命令は有効です。転勤命令を拒否した従業員には、転勤したくない理由を確認した上で、次の事項について、丁寧に説明をして、話し合うことが大事です。
- 具体的な業務上の理由があって、転勤が必要なこと
- これまで繰り返し転勤を行ってきた慣行があること
- 転勤を拒否する者が続くと、円滑な組織運営ができなくなること
- 法律的に、会社は転勤を命令できること
- 転勤命令を拒否する場合は、解雇もあり得ること
従業員に及ぶ負担が軽微で、それでも転勤を拒否する場合は、個別の事情によりますが、退職勧奨や普通解雇を検討することになると思います。懲戒解雇はこれまでの功績を無にするほどの重大な違反行為でないと認められませんので、懲戒解雇は無効と判断される可能性があります。
近年はプライベートが重視されていますので、従業員に及ぶ負担の程度の評価が変わって、転勤の拒否が認められやすくなるかもしれません。転勤命令を拒否されてトラブルになることを避けるために、転勤の対象者は公募制にして、応募者の中から決定する方法もあります。
また、採用時の労働条件の明示について、「就業の場所」及び「従事すべき業務」が明示する事項として定められていましたが、労働基準法が改正されて、その変更の範囲も記載することが義務付けられることになりました。
採用面接の際に、転勤に応じられることを確認して、本人に交付する雇用契約書に、転勤の可能性がある範囲を具体的に記載していれば、家庭の事情が変化した場合を除いて、転勤を拒否されることは考えにくいです。

執筆者:社会保険労務士 木下貴雄【 登録番号 第27020179号 】
就業規則を専門とする社会保険労務士です。中小零細企業の就業規則に関する悩みは全て解決いたします。日々の業務やホームページでは、分かりやすく伝えることを心掛けています。

