転勤命令の拒否

転勤命令の拒否

従業員に転勤を命じたのですが、拒否されました。どのように対応すれば良いでしょうか?

転勤を命じられる要件を満たしている場合は、会社の転勤命令は有効ですので、最終的には解雇を検討することになると思います。

通常は、就業規則に、「会社は業務の都合により必要がある場合は、配置転換又は転勤を命じることがある。」といった規定を設けていると思います。

就業規則の規定を根拠にして、原則的には、会社は従業員に対して、配置転換や転勤を一方的に命令することができます。

しかし、以下のとおり、例外となるケースが3つあって、そのいずれかに該当する場合は、従業員に転勤を命令(強制)することはできません。

まずは、採用時に、転勤がないことを約束していた場合です。就業規則の内容より、雇用契約の内容(個別に行った約束)の方が従業員にとって有利な場合は、雇用契約の方が就業規則より優先されます。

したがって、この場合は、会社が一方的に転勤を命じることはできません。本人から同意を得る必要があります。また、同意しなかったことを理由にして、会社が解雇等の不利益な取扱いをすることは許されません。

次に、例えば、家族に病人がいて世話をできる者が本人以外にいない等、転勤することによって、著しい負担を強いることになる場合は、従業員は転勤を拒否できます。実務上は、正式な転勤の辞令を出す前に、そのような事情がないか従業員に確認をするべきです。

最後に、嫌がらせや退職させることが目的で、業務上の必要性がない状況で転勤を命じたときも、転勤命令は無効と判断されます。

就業規則に異動(配置転換や転勤)に関する規定を設けていて、例外となる3つのケースに該当していなければ、会社が行った転勤命令は有効です。

転勤命令を拒否されたときの対応としては、次の点について従業員に説明をして、丁寧に話し合うことが大事です。また、転勤したくない理由を確認するべきです。

従業員に及ぶ負担が軽微で、それでも転勤を拒否する場合は、個別の事情によりますが、退職勧奨や普通解雇で対応するケースが多いと思います。

懲戒解雇はこれまでの功績を無にするほどの重大な違反行為でないと認められませんので、懲戒解雇は無効と判断される可能性があります。

近年はプライベートが重視されていますので、従業員に及ぶ負担の程度の評価が変わって、転勤の拒否が認められやすくなるかもしれません。転勤命令を拒否されてトラブルになることを避けるために、転勤の対象者は公募制にして、応募者の中から決定する方法もあります。

また、本人が転勤を想定していなかった場合(勝手に転勤がないと思い込んでいた場合)に、拒否されることがあります。採用面接の際に、転勤に応じられることを確認して、雇用契約書にも転勤の可能性があることを記載しておけば、転勤を拒否される可能性を抑えられます。