電車の遅延による遅刻の処理

電車の遅延による遅刻の処理

電車が遅延して、従業員が遅刻したときは、他社では賃金の支払いはどうしていますか?

会社が認めたときは遅刻扱いにしない(賃金を減額しない)という会社が少なくありません。

労働基準法(第26条)によって、会社の都合で休業させた場合は、平均賃金の60%以上の休業手当を支払うことが義務付けられています。

しかし、電車が遅延したことが原因で、従業員が遅刻したときは、会社の都合で休業させたことにはなりませんので、法律的には、「ノーワーク・ノーペイの原則」が適用されます。

つまり、働いていない時間に対して、賃金を支払う義務はありませんので、遅刻した時間に対する賃金を減額・控除できます。通常は、遅刻・早退・欠勤した時間分の賃金を減額・控除することを、就業規則(賃金規程)に記載していると思います。

したがって、出勤扱いにする必要はありませんが、電車の遅延は従業員の責任でもありませんので、遅延証明書を提出した場合は、遅刻扱いにしないという会社が少なくありません。また、例えば、20分遅刻をしたときに、始業時刻と終業時刻を20分繰り下げる会社もあります。その場合は、通常どおり、所定労働時間勤務したことになります。

不就業の時間については、法律的には賃金を減額・控除できますので、どのように処理をするかは、就業規則の規定によります。

就業規則に、「会社が認めたときは、遅刻扱いにしない」と定めている場合は、会社の判断で決定できます。遅刻した時間分の賃金を減額・控除しても構いませんし、支払っても構いません。

しかし、「遅延証明書を提出したときは、遅刻扱いにしない」と定めている場合は、規定に従って、賃金を減額・控除することはできません。

電車の遅延について、特に記載していない場合は、原則的には、就業規則(賃金規程)に基づいて、賃金を減額・控除することになりますが、従業員にとって有利な取扱いをすることは可能ですので、会社の判断で減額しない取扱いも可能です。

なお、これまで電車の遅延について、遅刻扱いにしていなかった(賃金を支払っていた)という労使慣行があると、既得権としてその取扱いを継続するよう求められます。

以上の考え方は、時間給のパートタイマー等についても同じですが、遅刻をした時間分の賃金は支払っていない会社が多いように思います。同一労働同一賃金の観点から、異なる取扱いはしない方が良いです。

業務に支障が生じなければ、労働時間を繰り下げる方法が合理的で、労使共に負担が少なくて理解が得られやすいと思います。