能力不足を理由とする賃金の引下げ
能力不足を理由とする賃金の引下げ
試用期間が終了した従業員について、能力が期待していたほどではありませんでした。賃金を引き下げることは可能ですか?
能力が不足していたとしても、会社が一方的に賃金を引き下げることはできません。
労働基準法(第15条)によって、従業員を採用したときは、労働条件を明示することが義務付けられています。また、賃金や労働時間等の重要な労働条件については、書面(雇用契約書や労働条件通知書)で明示することになっています。
この規定に基づいて、会社は採用時に雇用契約書や労働条件通知書を作成して、賃金の額を明示していると思いますが、賃金の額は契約内容の1つですので、会社が変更しようとする場合は、本人から同意を得る必要があります。
労働契約法(第8条)で、「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。」と規定されています。
労働条件の変更は、労使間で合意して行うことになっていますので、会社が一方的に労働条件(賃金の額)を変更することはできません。
会社から能力が不足していることを具体的に説明して、従業員に賃金の引下げを提案したとしても、従業員の立場で考えると、採用時に明示された賃金が支給されることは当然と思っていますので、応じることは考えにくいです。
もし、応じたとしても、「会社に騙された」と考えて、会社に対する不信感が高まって、モチベーションの低下は避けられません。他の従業員に悪影響が及ぶことも考えられます。
賃金の引下げを提案する前に、成果を上げられるように指導や教育を最優先に考えるべきです。不信感を持たれることはありませんし、成長すれば会社の財産になります。
なお、昇給及び賞与について、具体的な約束をしていなければ、昇給しないこと、賞与を支給しないことは可能です。
それでも賃金を引き下げたい場合は、本人に対して、現在の賃金に見合った成果を具体的に示して、1年後にそれが達成できなければ賃金を引き下げることを提案してはいかがでしょうか。1年の猶予期間を与えることにすれば、本人から同意を得やすくなると思います。
また、1年間は指導や教育を継続して、成果を達成できるように会社はサポートするべきです。1年後に達成できれば、賃金は維持又は昇給することになります。1年後に達成できなければ、改めて本人から同意を得て賃金を引き下げることになります。
従業員の募集をしても応募者が少なくて、賃金を高額に設定するケースがありますが、このような事態が生じないように、低い賃金で募集をして、そこから昇給していく方法が望ましいです。
若しくは、採用面接に専門知識が必要な質問を増やしたり、筆記試験や実技試験を加える等して、必要な能力があることを丁寧に確認するべきです。

執筆者:社会保険労務士 木下貴雄【 登録番号 第27020179号 】
就業規則を専門とする社会保険労務士です。中小零細企業の就業規則に関する悩みは全て解決いたします。日々の業務やホームページでは、分かりやすく伝えることを心掛けています。

