企画業務型裁量労働制の導入要件

企画業務型裁量労働制の導入要件

  • 企画業務型裁量労働制を導入している場合、労使委員会の決議を労働基準監督署に届け出ていますか?
  • 「当社では企画業務型裁量労働制を採用している」と言っても、労使委員会の決議を労働基準監督署に届け出ていない場合は無効になります。

【解説】

裁量労働制とは、業務の進め方や時間配分の決定方法を従業員の裁量に委ねて、実際に何時間勤務したとしても、みなし労働時間として定めた時間勤務したものとみなす制度です。

したがって、例えば、みなし労働時間を1日8時間とすると、実際に10時間勤務した日も、6時間勤務した日も、8時間勤務したものとみなしますので、会社は残業手当(割増賃金)を支払わなくても構いません。

裁量労働制には、「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の2種類があります。

企画業務型裁量労働制は、事業活動の中枢(本社など)で企画、立案、調査、分析を行う従業員に適用することができます。

企画業務型裁量労働制は、専門業務型裁量労働制より手間が掛かる制度で、導入する場合の手順は次のとおりです。

  1. 労使委員会を設置する。
  2. 労使委員会で決議をする。
  3. 決議した内容を労働基準監督署に届け出る。
  4. 対象者から個別に同意を得る。
  5. 企画業務型裁量労働制を実施する。
  6. 労働基準監督署に定期報告をする。

労働基準法によって、それぞれの手順ごとに具体的な要件が定められていますので、段階ごとに要件をクリアして進めないといけません。

例えば、1.の労使委員会は委員の要件が決められていたり、労使委員会の運営規程を作成したり、3.の労働基準監督署への届出は様式が決められていたり、6.の定期報告は6ヶ月以内ごとに1回義務付けられていたりします。

また、企画業務型裁量労働制を適用できる「事業活動の中枢(本社など)で企画、立案、調査、分析を行う従業員」についても、事業の運営に影響を及ぼす業務であることが求められます。認められる範囲は限定的で、ホワイトカラーの業務であれば該当するというものではありません。

更に、2.の労使委員会で決議をする内容は、次のとおりです。

  1. 対象となる業務
  2. 対象者の範囲
  3. みなし労働時間
  4. 健康及び福祉を確保するための措置
  5. 苦情を処理するための措置
  6. 従業員の同意に関すること
  7. 決議の有効期間(3年以内)
  8. 実施状況の記録の保存

企画業務型裁量労働制は労働時間に関する事項ですので、導入する場合は、就業規則に企画業務型裁量労働制に関する規定を設ける必要があります。

企画業務型裁量労働制を導入すると、会社は残業手当(割増賃金)の支払いが抑えられますので、過重労働に繋がりやすいです。それを防ぐために、労働基準法で複雑な要件が設定されています。

もし、労使委員会の決議を労働基準監督署に届け出ていない場合は、「当社では企画業務型裁量労働制を採用している」と言っても、要件を満たしていないことになります。

つまり、企画業務型裁量労働制は無効になりますので、実際の残業時間に応じて、残業手当(割増賃金)を支払うことが義務付けられます。

また、決議の有効期間が切れたまま放置している場合も、違法に企画業務型裁量労働制を適用していること(割増賃金の不払い)になります。

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