専門業務型裁量労働制の導入要件

専門業務型裁量労働制の導入要件

  • 専門業務型裁量労働制を導入している場合、労使協定を労働基準監督署に届け出ていますか?
  • 「当社では専門業務型裁量労働制を採用している」と言っても、労使協定を労働基準監督署に届け出ていない場合は無効になります。

【解説】

裁量労働制とは、業務の進め方や時間配分の決定方法を従業員の裁量に委ねて、実際に何時間勤務したとしても、みなし労働時間として定めた時間勤務したものとみなす制度です。

したがって、例えば、みなし労働時間を1日8時間とすると、実際に10時間勤務した日も、6時間勤務した日も、8時間勤務したものとみなしますので、会社は残業手当(割増賃金)を支払わなくても構いません。

裁量労働制には、「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の2種類があります。

専門業務型裁量労働制は、特定の専門業務に従事する従業員に適用することができる制度です。

専門業務型裁量労働制の対象となる専門業務は、次のとおり、労働基準法で限定されています。

  1. 新商品、新技術の研究開発の業務
  2. 情報処理システムの分析、設計の業務
  3. 新聞、出版、放送番組の制作の事業における取材、編集の業務
  4. デザイナーの業務
  5. 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務
  6. コピーライターの業務
  7. システムコンサルタントの業務
  8. インテリアコーディネーターの業務
  9. ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
  10. 証券アナリストの業務
  11. 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
  12. 大学における教授研究の業務
  13. 公認会計士の業務
  14. 弁護士の業務
  15. 一級建築士、二級建築士、木造建築士の業務
  16. 不動産鑑定士の業務
  17. 弁理士の業務
  18. 税理士の業務
  19. 中小企業診断士の業務

これらの業務のいずれにも該当しない場合は、専門業務型裁量労働制を採用することはできません。

これらの業務に該当し、専門業務型裁量労働制を採用する場合は、労使協定を締結して、労働基準監督署に届け出る必要があります。

労使協定で定める事項は、次のとおりです。

  1. 対象業務
  2. 業務の遂行手段、時間配分の決定等に関し、具体的な指示をしないこと
  3. 1日当たりのみなし労働時間数
  4. 健康、福祉を確保するための措置
  5. 苦情処理のため実施する措置
  6. 労使協定の有効期間(3年以内とすることが望ましい)
  7. 4.5.に定めた措置の記録の保存(有効期間満了後3年間保存)

会社は残業手当(割増賃金)の支払いが抑えられ、過重労働の危険があることから、複雑な要件が設定されています。

もし、労使協定を労働基準監督署に届け出ていない場合は、「当社では専門業務型裁量労働制を採用している」と言っても、要件を満たしていないことになります。

つまり、専門業務型裁量労働制は無効になりますので、実際の残業時間に応じて、残業手当(割増賃金)を支払うことが義務付けられます。

また、労使協定の有効期間が切れたまま放置している場合も、違法に専門業務型裁量労働制を適用していること(割増賃金の不払い)になります。

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