年次有給休暇の繰り越し
年次有給休暇の繰り越し
- 当年度内に未使用だった年次有給休暇は、翌年度に繰り越していますか?
- 年次有給休暇を付与して、従業員が当年度内に消化しなかった分は、翌年度に限り、繰り越さないといけません。
【解説】
勤続年数に応じて、決められた日数の年次有給休暇を付与することが、労働基準法で義務付けられています。
勤続年数 | 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年以上 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
稀に、使用期限を1年以内に限定して、年次有給休暇を付与するタイミングで、前年度に未消化だった年次有給休暇を無効にしている会社があります。
労働基準法で定められている最低基準を下回る取扱いですので、そのような処理は認められません。
労働基準法(第115条)によって、年次有給休暇の時効は2年間と定められています。
「この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は2年間、この法律の規定による退職手当の請求権は5年間行わない場合においては、時効によって消滅する。」
年次有給休暇を取得(請求)できる権利は、「その他の請求権」に含まれます。
この規定は従業員の種類に関係なく適用されますので、パートタイマーやアルバイトであっても同じです。
また、有期労働契約(1年契約など)を更新している場合も同じです。更新時に無効にする(リセットする)処理は間違いです。有期労働契約を更新する場合は、勤務は最初から継続しているものとみなす必要があります。
そして、一般的な就業規則には、当年度に付与されて未消化の年次有給休暇は、翌年度に限り、繰り越すことができるというような規定が設けられていると思います。
翌年度に繰り越すことによって、2年間の時効を定めた労働基準法をクリアできることになります。「翌年度に限り」と規定されているとおり、1回繰り越せば良くて、それ以降は繰り越す義務はありません。
翌年度に繰り越して、翌年度中に未消化だった年次有給休暇は、無効になります(時効の2年間が経過して、請求できる権利が消滅します)。その場合、従業員が年次有給休暇を取得できる権利を放棄したものとみなされます。
なお、年次有給休暇の請求権は付与した日から2年間と定められていますが、それまでに退職した場合は、退職日以降は取得できません。
年次有給休暇は出勤日の勤務を免除して賃金を支払うという制度です。退職日以降は出勤日がありませんので、年次有給休暇の取得は不可能になります。
もっと詳しく
- 労働基準法 第115条<時効>【なるほど労働基準法】
- 労働基準法 第39条第2項<有給休暇の日数>【なるほど労働基準法】
- 労働基準法 第39条第3項<パートタイマーの有給休暇>【なるほど労働基準法】
- 労働関係の時効【労務管理の知恵袋】
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