有期雇用の正社員

有期雇用の正社員

期間を定めないで雇用すると解雇が難しいので、最初は期間を定めて雇用しようと考えています。しかし、応募者が減るのは避けたいので、正社員のまま募集をしても問題はないでしょうか?

法律的な問題はないですが、勘違いされないように注意をする必要があります。

労働基準法等の法律に、「正社員とは、・・・の者をいう」というような定義はありません。

正社員、パートタイマー、嘱託、契約社員、臨時従業員など、従業員の呼び方や区別の仕方は、それぞれの会社の自由です。通常は就業規則で、その会社の従業員の種類(呼称)とそれぞれの定義を定めています。

したがって、例えば、正社員として1年間の期間を定めて雇用することは、法律的には問題はありません。雇用契約書に契約期間を明示して、採用することになると思います。

しかし、一般的には「正社員=無期雇用」で、定年年齢まで働けると受け取る人が大半と思います。そのように思い込んで応募してきた人が、後から期間を定めた雇用であると説明されて、辞退することが考えられます。そうなると、会社も応募者もそれまでに要した時間が無駄になります。

また、勘違いはトラブルの原因になりますので、できる限り排除するべきです。仮に、勘違いしたまま雇用して、会社が雇止めをすると大きな問題になります。

期間を定めた雇用であることを明確にするために、「正社員」とは別に「契約社員」を設けて、「契約社員」として期間を定めて雇用する方法が良いと思います。「契約社員=有期雇用」は一般的ですので、無期雇用と勘違いされるケースを減らせます。

その場合は、就業規則に、「契約社員」の記載を追加する必要があります。

ただし、「契約社員」で募集すると、「正社員」で募集した場合より、応募者数が少なくなる傾向があります。「契約社員」という呼び方が敬遠されるのかもしれませんが、「期間を定めた雇用であること」が一番の原因と思います。

有期雇用の事実を隠したまま、正社員で募集をすると、応募者が集まりやすいかもしれませんが、無期雇用と思い込んだ人が増えるだけで、トラブルになる可能性が高まります。

応募者数とトラブルの可能性のどちらを優先するかは経営判断によりますが、個人的には、契約社員で募集する方法が良いと思います。

そして、期間を定めて雇用する場合は、「更新の有無」と更新の可能性がある場合は「判断の基準」を明示しないといけません。とりあえず、期間を定めて雇用して、見込みがあると会社が判断した者は正社員として採用したいということであれば、雇用契約書に次のような記載をすることになります。

「契約期間の満了によって、本契約は当然に終了する。ただし、従業員の希望により、当人の勤務態度、勤務成績、職務遂行能力等を考慮して、新たに採用することがある。」

原則的には契約期間の満了で契約を打ち切って、会社が認めた者に限って正社員として採用するという形にしています。

「契約期間中に問題がなければ、正社員として採用する」というような記載をしていると、問題があったことを会社が立証する必要があります。契約期間中に問題があって、会社が指導や教育を怠っていると、問題として認識していなかったものとして、会社の主張は認められにくくなります。

「正社員として採用される」と期待されると、そう思わせた会社に責任があるとして、正社員として採用するべきであると判断される可能性が高くなります。口頭による説明でも、期待させないようにすることが重要です。