1ヶ月単位の変形労働時間制の上限時間

1ヶ月単位の変形労働時間制の上限時間

1ヶ月単位の変形労働時間制を導入しようと考えていますが、従来どおりの方法で出勤日と労働時間を設定すると、どうしても1ヶ月を平均して1週40時間を超えてしまいます。どうすれば良いでしょうか?

形式上、所定労働時間は1ヶ月を平均して1週40時間以内で設定する必要があります。その上で、それを超えた時間に対して、割増賃金を支払えば問題はありません。

1ヶ月単位の変形労働時間制については、労働基準法(第32条の2)によって、次のように規定されています。

労働基準法第32条第1項で、1週40時間を超えて労働させること、第2項で、1日8時間を超えて労働させることが禁止されています。したがって、「前条第1項の労働時間」は1週40時間、「同条第2項の労働時間」は1日8時間を指します。

整理すると、就業規則で、1ヶ月を平均して1週間の所定労働時間を40時間以内とすることを定めたときは、1週40時間又は1日8時間を超えて労働させることが可能になります。

原則的には、1週40時間又は1日8時間を超えて労働させた時間は時間外労働として、125%の割増賃金を支払うことが義務付けられています。

しかし、1ヶ月単位の変形労働時間制を導入して、1ヶ月を平均して1週40時間以内になるように、所定労働時間を設定したときは、その範囲内で勤務をしていれば、労働時間が1週40時間を超える週又は1日8時間を超える日があったとしても、割増賃金を支払わなくても構いません。

1週40時間が基準になりますが、各月の暦日数が異なりますので、1週40時間とした場合の1ヶ月の総労働時間が各月の暦日数によって、次のように変動します。

暦日1ヶ月の総労働時間
31日の月177.1時間(=40時間/7日×31日)
30日の月171.4時間(=40時間/7日×30日)
29日の月165.7時間(=40時間/7日×29日)
28日の月160.0時間(=40時間/7日×28日)

この時間が、1ヶ月単位の変形労働時間制を導入する場合の各月の所定労働時間の上限になります。この範囲内で所定労働時間を設定していれば、1ヶ月を平均して1週40時間以内に収まります。

例えば、31日の月で、1日の所定労働時間を8時間、1ヶ月の所定労働日数を23日とすると、所定労働時間は月184時間(8時間×23日)になりますので、上限を超えてしまいます。

1ヶ月の所定労働日数を22日とすれば、所定労働時間は月176時間(8時間×22日)となって、上限の範囲内に収まります。

減らした1日について、出勤の必要がある場合は、形式上は休日としておいて、休日労働を命じて、休日勤務手当や時間外勤務手当を支払えば問題はありません。

もしくは、1日の所定労働時間を7時間40分とすれば、1ヶ月の所定労働日数が23日でも、所定労働時間は176時間20分となって、上限の範囲内に収まります。

1ヶ月単位の変形労働時間制を導入する場合は、曜日の巡りや祝日の有無等によって、1ヶ月の総労働時間を上限の範囲内で設定しにくいケースがあります。

月毎に設定することが難しい場合は、1年単位の変形労働時間制の方が合っているかもしれません。ただし、1年単位の変形労働時間制を導入する場合は、就業規則に規定した上で、労使協定を締結して、労働基準監督署に届け出ることが条件になっています。

なお、1ヶ月単位の変形労働時間制については、労使協定の締結及び届出は不要で、就業規則に規定すれば導入が可能です。