タフレックスタイム制と年次有給休暇の充当

フレックスタイム制と年次有給休暇の充当

当社はフレックスタイム制を採用しているのですが、実際に行った1ヶ月間の労働時間の合計が、あらかじめ定めていた1ヶ月の総労働時間に満たなかった場合に、年次有給休暇を取得したものとみなして、その日数分の標準労働時間を加算して処理しても良いでしょうか?

そのような取扱いは法律の趣旨に反しますので、本人が同意していたとしても問題があります。

労働基準法により、従業員の心身の疲労を回復し、労働力の維持培養を図るために、一定期間継続勤務をした従業員は年次有給休暇を取得できることが定められています。

フレックスタイム制が適用される場合は、従業員は出退勤の時刻を自由に決められますが、出勤日や休日までは自由に決められません。所定労働日と定められた日は、出勤する義務があります。

そして、従業員が所定労働日に年次有給休暇を取得したときは、その日は標準労働時間勤務したものとして取り扱います。

このように、実際に年次有給休暇を取得したときは、1ヶ月間の労働時間に標準労働時間を加算して処理します。

しかし、実際に年次有給休暇を取得していない場合は、年次有給休暇を取得したものとして処理することはできません。年次有給休暇の買取りと同じことになりますので、法律の趣旨・目的に反すると考えられます。本人が同意していたとしても変わりません。

ただし、不足時間が発生した当月の休日と翌月の出勤日を振り替えた上で、本人が申し出て当月のその日に年次有給休暇を取得すれば、違法とまでは言えないと思いますが、結果的に年次有給休暇の買取りと同じことになりますので、余りお勧めできる方法ではありません。

なお、不足時間が生じた場合に、例えば、不足した時間が10時間で、金額にすると1万円だったとします。

このときに、翌月の総労働時間に10時間を加算しても、1ヶ月を平均して1週40時間という法定労働時間の範囲内に収まる場合に限り、不足分を翌月に繰り越す方法が認められています。

つまり、当月に不足時間が生じたときは、その時間分の賃金(1万円)を減額して支払う方法が原則ですが、通常の(満額の)賃金を支払って、翌月に不足分の10時間(1万円)を繰り越して清算することができます。

これは不足があって、かつ、翌月に繰り越しても法定労働時間内に収まる場合に限られる方法です。反対に、過剰があった場合は月毎に賃金の処理をして、支払う必要があります。過剰分を翌月に繰り越すことはできません。