フレックスタイム制の年次有給休暇の充当
フレックスタイム制の年次有給休暇の充当
フレックスタイム制を採用していますが、1ヶ月の実働時間が、あらかじめ定めていた1ヶ月の総労働時間に満たない従業員がいることがあります。そのときに、年次有給休暇を取得したことにして、その日数分の労働時間を加算して処理しても良いでしょうか?
そのような取扱いは、労働基準法の趣旨に反しますので、本人が同意したとしても問題があります。
清算期間を1ヶ月とするフレックスタイム制を導入する場合は、標準となる1日の労働時間、1ヶ月の総労働時間を定めます。
標準となる1日の労働時間は8時間以内、1ヶ月の総労働時間は1ヶ月を平均して1週40時間以内とする必要があります。また、1ヶ月の総労働時間は、「標準となる1日の労働時間×1ヶ月の所定労働日数」で計算します。
フレックスタイム制を適用する場合は、従業員は出退勤の時刻を自由に決められますが、出勤日(所定労働日)や休日は自由に決められません。会社が所定労働日と定めた日に出勤する義務があります。
また、労働基準法によって、6ヶ月以上継続勤務をした従業員に対して、年次有給休暇を付与することが義務付けられています。
そして、従業員が所定労働日に年次有給休暇を取得したときは、その日は標準労働時間勤務したものとみなして取り扱います。例えば、標準労働時間が8時間とすると、その月の実働時間に8時間を加算して処理をします。
年次有給休暇は、出勤日の勤務を免除して、賃金を支払うという制度ですので、休日に取得することはできません。また、従業員の心身の疲労を回復して、労働力の維持培養を図ることを目的とする制度ですので、原則的には、年次有給休暇の買取りは禁止されています。
1ヶ月の実働時間が、あらかじめ定めていた1ヶ月の総労働時間に満たない場合に、年次有給休暇を取得したことにして、その日数分の標準労働時間を加算することは許されません。
実際に年次有給休暇を取得していませんので、それが可能とすると、年次有給休暇の買取りと同じことになります。本人が同意したとしても認められません。
ところで、1ヶ月の実働時間が1ヶ月の総労働時間に満たない場合は、その不足時間分の賃金を控除する方法が原則です。
例外として、賃金を控除しないで、不足時間を翌月の総労働時間に繰り越して加算する方法が認められています。賃金の前払いのような処理になります。ただし、翌月に繰り越せる時間は、元の総労働時間と合計して、1ヶ月を平均して1週40時間の範囲内に限られます。
これは不足時間があって、かつ、翌月に繰り越しても法定労働時間内に収まる場合に認められる方法です。反対に、過剰時間があった場合は、月毎に時間外労働の時間を計算して、賃金を支払う必要があります。過剰時間を翌月に繰り越すことはできません。
また、不足時間が発生した当月の休日と翌月の出勤日を振り替えた上で、本人が申し出て当月の振り替えた日(出勤日)に年次有給休暇を取得すれば、違法とまでは言えないと思います。ただし、結果的に年次有給休暇の買取りと同じことになりますので、余りお勧めできる方法ではありません。