1週44時間労働が認められる業種

1週44時間労働が認められる業種

介護事業の開業を計画していますが、1週間の所定労働時間を44時間とすることができますか?

労働基準法によって、介護事業で従業員数が10人未満の場合は、1週間の所定労働時間を44時間とすることが認められています。

労働基準法(第32条)によって、原則として、1週40時間又は1日8時間を超えて労働させることが禁止されています。

したがって、所定労働時間は、1週40時間以内、かつ、1日8時間以内とする必要があります。これを超えた労働時間は、時間外労働として割増賃金(125%の時間外勤務手当)を支払わないといけません。

ただし、労働基準法施行規則(第25条の2)によって、次のように規定されています。

使用者は、法別表第1第8号、第10号(映画の製作の事業を除く。)、第13号及び第14号に掲げる事業のうち常時10人未満の労働者を使用するものについては、法第32条の規定にかかわらず1週間について44時間、1日について8時間まで労働させることができる。

ここで挙げられた事業に該当して、従業員数が10人未満の企業は、労働基準法第32条の規定を適用しないで、1週44時間、1日8時間まで、労働させることが可能になります

1日8時間までという上限は同じで、法人の種類に関係なく、個人事業も同様に取り扱われます。また、従業員数は正社員に限らず、契約社員、パートタイマー、アルバイト等も含めて数えます。

別表第1の第8号、第10号、第13号、第14号は、次のとおりです。なお、第10号の映画の製作の事業は除外されています。

第8号【商業】物品の販売、配給、保管若しくは賃貸又は理容の事業
第10号【映画・演劇業】映画の製作又は映写、演劇その他興行の事業
第13号【保健衛生業】病者又は虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業
第14号【接客娯楽業】旅館、料理店、飲食店、接客業又は娯楽場の事業

介護事業は第13号の保健衛生業に該当しますので、従業員数が10人未満の場合は、例えば、1日の所定労働時間を7時間20分、1週間の所定労働日数を6日とすることが可能です。

1週間の所定労働時間は44時間(7時間20分×6日)ですので、この範囲内で勤務をしていれば、割増賃金を支払う義務はありません。

また、1ヶ月を平均して1週間の所定労働時間を44時間以内として、1ヶ月単位の変形労働時間制、フレックスタイム制を導入することが認められています。

ただし、1年単位の変形労働時間制、1ヶ月を超えるフレックスタイム制については不可能で、原則的な1週40時間の労働時間が適用されます。

1ヶ月単位の変形労働時間制を導入する場合は、1ヶ月を平均して1週間の所定労働時間を44時間以内に設定すれば、1日の所定労働時間が8時間を超えても構いません。

例えば、1日の所定労働時間を8時間45分、1週間の所定労働日数を5日とすることが可能です。1日8時間を超えていますが、1週43時間45分ですので、この範囲内で勤務をしていれば、割増賃金を支払う義務はありません。

企業にとっては、割増賃金の支払いを抑制できますので、大きなメリットがあります。一方、従業員にとっては、他社と比較して、労働時間が長い割に賃金が低額と受け取られますので、採用が難しくなる恐れがあります。

また、従業員が増えて10人以上になったときは、1週間の所定労働時間を44時間から40時間に短縮しないといけません。そして、労働時間が1週40時間を超えたときは、超えた時間に対して、割増賃金を支払う義務が生じます。

従業員が10人以上になると、急な負担増を強いられますので、1週44時間が認められる場合であっても、従業員の増員に合わせて徐々に1週40時間に近付けて準備をすることが望ましいです。

なお、開業して2〜3年以内に従業員の増員を計画している場合は、最初から1週間の所定労働時間を40時間としている会社も多いです。

また、小売業、飲食業、接客業等に該当して、従業員数が10人未満の会社で、1週間の所定労働時間を40時間としている会社があります。その場合に、1週間の所定労働時間を44時間にできることを知って、そのように変更できないかと相談されることがあります。

会社が一方的に従業員の労働条件(労働時間や賃金等)を変更することはできませんが、従業員と話し合って本人が同意をすれば、変更は可能です。

しかし、所定労働時間を延長するだけで、賃金額が変わらないとすると、従業員の不利益が大きいので、本人が同意したとしても、労使関係の悪化は避けられないと思います。

もし、所定労働時間を延長する場合は、会社及び従業員のどちらかに一方的に不利益(利益)が偏らないように、賃金を増額して調整することが望ましいです。