就業規則による労働契約の変更の例外

就業規則による労働契約の変更の例外

労働契約法 第10条

使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第12条に該当する場合を除き、この限りでない。

【就業規則による労働契約の変更の例外】の解説です

変更後の就業規則を従業員に周知して、就業規則の変更が合理的と認められる場合は、会社は就業規則を変更して、労働条件を変更できます。

どういうこと?

例外的に、就業規則の変更が認められる場合があると言っていた。

その例外に関する規定です。同意しない従業員がいたとしても、条件を満たしている場合は、就業規則の変更が認められます。

その条件というのは?

変更後の就業規則を従業員に周知していること、就業規則の変更が合理的であること、です。

周知というのは?

従業員が就業規則を見たいと思ったときに、直ぐに見られる状態にしていることです。就業規則を、各職場の書棚に置いていれば大丈夫です。

就業規則の変更が合理的であるというのは?

次の内容が列挙されています。

  1. 就業規則の変更によって従業員が受ける不利益の程度
  2. 就業規則の変更の必要性の内容や程度
  3. 変更後の就業規則の内容の相当性
  4. 代償措置や他の労働条件の改善状況
  5. 労働組合や従業員代表等との交渉の経緯
  6. 就業規則の変更に無関係な他の従業員の対応
  7. 世間一般の状況

難しそうだけど、これらを全部クリアしないといけない?

これらの要素を総合的に考慮して、就業規則の変更が合理的かどうか判断されますので、就業規則を不利益に変更しようとする場合は、1つ1つクリアするよう検討する必要があります。

抽象的な内容だけど、具体的に分かりやすくならない?

基本的には、「従業員が受ける不利益の程度」と「会社において就業規則を変更する必要性」のバランスが取れているかどうかで判断されますので、一律に具体的な基準を定めることは不可能です。

そうかな?

例えば、変更の必要性の内容や程度について、「3期連続赤字」を基準と決めると、従業員が受ける不利益の程度が僅かな場合であっても、「3期連続赤字」になるまで会社は就業規則を変更できないことになってしまいます。

なるほど。従業員が受ける不利益の程度が僅かな場合は、そこまで厳しい基準は適用されない?

はい。合理性の判断は個々のケースに応じて、例えば、賃金や退職金を減額するような重大な労働条件を変更するときは、変更の必要性も高いハードルをクリアすることが求められます。

条件を満たしている場合は、反対する従業員がいたとしても、会社は就業規則の不利益変更が可能になるんだね。

そうです。ただし、労働契約として、就業規則より有利な労働条件で個別に合意していた部分については、その労働契約が優先されます。

個別に合意していた部分?

特別な手当を支払うことを約束していたり、個別に就業規則と異なる契約をしていた部分については、就業規則は適用されないで、その労働契約(個別に合意していた内容)が優先して適用されます。

それと同じ趣旨です。