社会保険の月額変更届(随時改定)

社会保険の月額変更届(随時改定)

社会保険(厚生年金保険と健康保険)に関して、昇給をしたときは、何か届出が必要なのでしょうか?

昇給の額によっては、年金事務所(又は事務センター)に、月額変更届を提出する必要があります。

社会保険(健康保険と厚生年金保険)の保険料は、次のように、従業員ごとに定められた標準報酬月額を基準にして算出します。

厚生年金保険の保険料率は18.30%(労使折半で9.15%)で固定ですが、健康保険と介護保険の保険料率は、毎年3月分(4月納付分)から見直すことになっています。

社会保険について、毎年7月に算定基礎届を作成して、年金事務所(又は事務センター)に届け出ていると思いますが、その算定基礎届に基づいて、各従業員の標準報酬月額が決定されます。決定した標準報酬月額は、当年の9月から翌年の8月まで適用されます。

これが原則ですが、賃金に大幅な変動があったときは、変動後の賃金に応じた標準報酬月額に見直すため、会社は「被保険者報酬月額変更届」を作成して、年金事務所(又は事務センター)に提出することが義務付けられています。

標準報酬月額の改定に伴って、社会保険(健康保険と厚生年金保険)の保険料が見直されます。この制度のことを「随時改定」と言います。届出書類の名称が「被保険者報酬月額変更届」ですので、「月額変更届」と言うこともあります。

随時改定(月額変更届)の条件となる賃金の大幅な変動というのは、次の3つを全て満たしている場合を言います。

  1. 固定的な賃金(基本給、職務手当、通勤手当、家族手当等)に変動があった。
  2. 変動月から3ヶ月の間に支払った賃金の平均月額に該当する標準報酬月額と、現在の標準報酬月額に2等級以上の差が生じた。
  3. 変動月から3ヶ月とも、賃金支払基礎日数が17日以上である。

1.について、月によって変動する時間外勤務手当や休日勤務手当は、固定的な賃金に該当しませんので、これが大幅に増えたり、減ったりしても、固定的な賃金に変動がなければ、随時改定(月額変更届)の対象にはなりません。

ただし、2.で2等級以上の差が生じたかどうかを比較するときは、月によって変動する賃金(時間外勤務手当や休日勤務手当)も含めて計算します。

3.について、特定適用事業所に勤務する短時間労働者については、11日以上が基準になります。

3ヶ月目の賃金を支払って、全ての要件を満たしていることを確認したときは、速やかに月額変更届を提出する必要があります。届出により、変動月から数えて4ヶ月目の標準報酬月額(4月に変動があった場合は7月の標準報酬月額)から改定されます。

昇給や降給をしたときに、随時改定(月額変更届)の対象者がいなければ、月額変更届を提出する必要はありません。

なお、固定的な賃金と同じ方向に、つまり、固定的な賃金を増額して標準報酬月額が2等級以上 上がった場合、固定的な賃金を減額して標準報酬月額が2等級以上 下がった場合に、随時改定(月額変更届)の対象になります。

例えば、基本給を増額して、時間外勤務手当が減少して、標準報酬月額が2等級以上 下がった場合は随時改定(月額変更届)の対象にはなりません。

反対に、基本給を減額して、時間外勤務手当が増加して、標準報酬月額が2等級以上 上がった場合も随時改定(月額変更届)の対象にはなりません。

定期昇給で一斉に昇給をする場合は、2等級以上の差が生じたかどうか確認していても、家族手当や通勤手当の額を個別に変更した場合に、確認が漏れているケースがあります。

年金事務所の調査に当たると、指摘を受けることになります。