賃金の前借り・前払い(非常時払い)

賃金の前借り・前払い(非常時払い)

従業員が「給料を前借りしたい」と言ってきました。会社は応じないといけませんか?

前借り・前払いを申し出た理由が、労働基準法で定められている非常時払の事由に該当する場合は、応じないといけません。該当しなければ、応じる義務はありませんので、会社の判断によります。

就業規則(賃金規程)に、例えば、賃金の締切日を毎月末日、支払日を翌月10日と記載している会社については、毎月末日までの労働時間に対する賃金を翌月10日に支払っていれば問題はありません。

支払日が来る前に、従業員が「賃金を前借りしたい」と言ってきたとしても、会社は応じる必要はありません。応じるかどうかは会社の判断によります。

ただし、労働基準法(第25条)によって、次のように規定されています。

出産、疾病、災害等の非常事態が生じて、従業員が請求した場合は、支払日前であっても、過去の労働時間に対する賃金を支払うことが義務付けられています。

請求できる非常事態については、厚生労働省令(労働基準法施行規則)でも定められていて、労働基準法(第25条)の規定と合わせて整理すると、次のようになります。

従業員又はその家族(従業員の収入によって生計を維持する者)が、

従業員本人が該当した場合に加えて、その家族(従業員の収入によって生計を維持する者)が該当した場合も対象になります。

そして、支払いが義務付けられるのは、過去の労働時間に対する賃金ですので、例えば、従業員が7月20日に請求したとすると、7月20日までの労働時間に対する賃金を計算して支払うことになります。

なお、労働基準法は労働条件の最低基準を定めた法律ですので、賃金の正確な計算が面倒な場合は、概算で計算して、多めに支払っていれば問題はありません。10日の支払日に適正に相殺・調整をすれば差し支えありません。

従業員が賃金の前借り・前払いを申し出た理由がいずれにも該当しなければ、応じる必要はありません。もし、会社が応じても良いと考える場合は、金額にもよりますが、貸付金として返済方法等を明らかにした書面を交わすことが望ましいです。