退職予定者の賞与の減額

退職予定者の賞与の減額

退職を予定している従業員にも賞与を支給しないといけませんか?また、通常より賞与の支給額を減額すると問題がありますか?

賞与を多少減額する程度であれば認められますが、賞与を不支給にしたり、減額幅が大き過ぎると問題があります。

労働基準法上、賞与とは、「定期又は臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額が予め確定されていないもの」と定義されています。

賞与は従業員ごとの勤務成績に応じて、原則的には会社が自由に決定できます。支給額が予め確定していませんので、会社の業績が著しく悪化して支払えない場合は、賞与を不支給とすることも可能です。

しかし、例えば、「賞与は基本給の3ヶ月分とする」と具体的に約束していた場合は、約束どおり支払わないといけません。このように支給額が予め確定している場合は、労働基準法上は賞与に該当しません。支給義務がある賃金に該当します。

そして、賞与の支給額を約束していない場合であっても、極端な取扱いは問題があります。

ところで、賞与には、一般的に次のような性質があると考えられています。

  1. 賃金の後払い
  2. 成果の配分
  3. 将来の期待

これ以外の性質を含むこともあって、各要素が賞与に占める割合は会社ごとに異なります。

退職予定者について、賞与を減額できるのは、その会社における「3.将来の期待」の部分が基準になります。「1.賃金の後払い」と「2.成果の配分」の部分は、通常どおり評価をして支払う必要があると考えられます。

例えば、新入社員(賞与の支給対象期間に勤務していない)については、初年度は賞与を不支給としたり、寸志程度を支給することがあります。これは、「1.賃金の後払い」と「2.成果の配分」(過去の勤務)を重視していることの表れです。

これに関連する裁判例(ベネッセコーポレーション事件)で、退職を予定している従業員の賞与を通常より82%減額したケースがあります。この裁判では、82%の減額は無効として、20%減額した場合との差額を支払わなければならないと判断しました。

要するに、退職予定者について、賞与の20%の減額は認めました。これは地方裁判所の判決で、この会社のケースですので、一般的に確立した基準ではありませんが、目安にはなると思います。

仮に、新入社員(賞与の支給対象期間に勤務していない)にも、初年度から相応の賞与を支払っている会社では、「3.将来の期待」の割合が大きいと認められて、退職予定者の賞与はそれに応じて減額できると考えられます。

また、賞与の支給日に既に退職している者については、就業規則の規定の仕方によって、賞与を不支給とすることができます