退職予定者の賞与の減額・不支給

退職予定者の賞与の減額・不支給

退職を予定している従業員にも賞与を支給しないといけませんか?賞与を減額すると問題がありますか?

退職を理由にして、賞与を不支給とすることは問題があります。一般的に、2割程度の減額であれば認められやすいですが、それを超える減額は認められない可能性があります。

労働基準法上、賞与とは、「定期又は臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額が予め確定されていないもの」と定義されています。

一般的に賞与は、支給対象期間の利益の一部を還元するものと位置付けて、従業員ごとに貢献度等を評価して支給額を決定している会社が多いです。そのため、会社の業績が著しく悪化したときは、賞与を不支給とすることも可能です。

しかし、例えば、採用時に「賞与は基本給の3ヶ月分とする」と具体的に約束していた場合は、約束どおり支払わないといけません。なお、支給額が予め確定しているものは、労働基準法上は賞与に該当しません。支給義務がある賃金に該当します。

原則的に、賞与の支給額は予め確定していませんので、従業員の勤務成績に応じて、会社が自由に決定できます。しかし、極端な取扱いは問題があります。

ところで、賞与には、一般的に次のような性質があると考えられています。

  1. 賃金の後払い
  2. 成果の配分
  3. 将来の期待

これ以外の性質を含むこともあって、それぞれの要素が賞与に占める割合は、会社ごとに異なります。

退職予定者について、賞与を減額できるのは、その会社における「3.将来の期待」の部分が基準になります。「1.賃金の後払い」と「2.成果の配分」の部分は、通常どおり評価をして支払う必要があると考えられます。

例えば、新入社員については、初年度は賞与を不支給としたり、寸志程度を支給している会社が多いです。これは、「1.賃金の後払い」と「2.成果の配分」を重視していることの表れで、そのような取扱い自体は問題ありません。

そして、「1.賃金の後払い」と「2.成果の配分」を重視している(割合が大きい)会社については、退職予定者に対して、相応の賞与を支払うことが求められます。賞与を不支給にしたり、大幅に減額することは認められません。

反対に、新入社員にも、初年度から寸志以上の賞与を支払っている会社については、「3.将来の期待」の割合が大きいと認められて、退職予定者の賞与はそれに応じて減額できると考えられます。

これに関連する裁判例(ベネッセコーポレーション事件)で、退職を予定している従業員の賞与を通常より82%減額して争われたケースがあります。この裁判では、82%の減額は無効として、20%減額した場合との差額を支払わなければならないと判断しました。

要するに、退職予定者について、賞与の20%の減額は認めました。これは地方裁判所の判決で、この会社のケースですので、一般的に確立した基準ではありませんが、目安にはなると思います。

なお、賞与の支給日に退職している者については、就業規則の規定の仕方によって、賞与を不支給とすることができます


執筆者:社会保険労務士 木下貴雄【 登録番号 第27020179号 】
就業規則を専門とする社会保険労務士です。中小零細企業の就業規則に関する悩みは全て解決いたします。日々の業務やホームページでは、分かりやすく伝えることを心掛けています。