従業員が希望する銀行への振り込み

従業員が希望する銀行への振り込み

従業員に支払う賃金は、会社と取引がある銀行の口座に振り込んでいるのですが、従業員が「振込先は別の○○銀行にして欲しい」と言ってきました。会社はどのように対応すれば良いでしょうか?

会社が説得しても応じてもらえない場合は、本人が指定する銀行の口座に振り込むか、現金で支払うか、どちらかになります。

労働基準法では、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」として、現金で(手渡しで)支払うことが義務付けられています。

ただし、労働基準法 施行規則で、従業員の同意を得た場合は、「当該労働者が指定する銀行その他の金融機関に対する当該労働者の預金又は貯金への振込み」によって、賃金を支払う方法が認められています。

つまり、労働基準法上、賃金は、原則的には現金で(手渡しで)支払うことになっていて、例外的に本人が同意した場合は、銀行振り込みで支払うことができるという構成になっています。

賃金を振り込む銀行(金融機関)は、本人が指定することになっていますので、会社が強制的に指定することはできません。もし、事務処理や手数料等の都合で、会社が1つの銀行(金融機関)のみの取扱いとしたい場合は、従業員に説明をして同意を得る必要があります。

なお、通達によって、振込先は1つの金融機関に限定しないで、複数の金融機関から選べるよう配慮することが求められています。

これは労働基準法上の義務ではありませんが、少なくとも2つは振込先として用意することが望ましいです。振込先の選択肢がないと、「その銀行では口座を作りたくない」、「振込先は別の○○銀行にして欲しい」と言われて、従業員から同意を得られない可能性が高くなります。

会社として、従業員が希望する○○銀行に振り込んでも支障がなければ、そうしてください。支障がある場合は、従業員の申出に応じる義務はありません。

会社が応じられない場合は、銀行振り込みについて、従業員から同意を得られなかったことになりますので、原則に戻って、賃金は現金で(手渡しで)支払うことになります。現金での支払が原則ですので、労働基準法上は適法で問題ありません。

会社としては、従業員の申出に応じるか、現金で支払うか、どちらかを選ぶことになります。

ところで、採用面接のときに(採用決定を通知する前に)、「もし、採用することになった場合、振込先は○○銀行になりますが良いですか?」と聴いておけば、「嫌です」と言われることはまずないです。

なお、賃金は全額を支払うことが義務付けられていますので、賃金から振り込み手数料を控除することはできません。従業員の申出に応じる代わりに、振り込み手数料を控除することを条件にして、本人が同意したとしても違法になります。