同一労働同一賃金と賞与の支給
同一労働同一賃金と賞与の支給
当社では、正社員には賞与を支給していますが、契約社員とパートタイマーには賞与を支給していません。同一労働同一賃金の関係で問題はないでしょうか?
正社員と契約社員、正社員とパートタイマーの業務内容等の相違の程度によっては、問題になる可能性があります。
同一労働同一賃金の制度が法定化されましたので、「契約社員だから」「パートタイマーだから」「アルバイトだから」というのは、賞与を不支給とする正当な理由にはなりません。
厚生労働省が策定した「同一労働同一賃金のガイドライン」では、会社の業績等に対する従業員の貢献に応じて賞与を支給している場合は、正社員と同一の貢献をした契約社員やパートタイマー、アルバイト等に、正社員と同一の賞与を支給しなければならないことが示されています。
また、貢献に一定の相違がある場合は、その相違に応じた賞与を支給しなければならないことも示されています。
要するに、貢献度に応じて賞与の支給額を決定して支給している会社は、各従業員の貢献度を評価して、それに応じた賞与を契約社員やパートタイマー、アルバイト等にも支給しないといけません。
また、同一労働同一賃金のガイドラインでは、賞与に関して、【問題となる例】と【問題とならない例】が示されています。
【問題となる例】
- 会社の業績等に対する従業員の貢献に応じて賞与を支給している会社で、業績等に対する貢献が正社員と同一の契約社員やパートタイマー等に対して、正社員と同一の賞与を支給していない。
- 会社の業績等に対する従業員の貢献に応じて賞与を支給している会社で、業績等に貢献していない正社員にも賞与を支給しているが、契約社員やパートタイマーには支給していない。
【問題とならない例】
- 会社の業績等に対する従業員の貢献に応じて賞与を支給している会社で、業績等に対する貢献が正社員と同一の契約社員やパートタイマー等に対して、正社員と同一の賞与を支給している。
- 正社員は生産効率や品質の目標に対する責任があり、その目標を達成しなかった場合は、待遇上の不利益が課される。一方、パートタイマーは生産効率や品質の目標に対する責任がなく、その目標を達成しなかった場合でも、待遇上の不利益が課されない。正社員には賞与を支給しているが、契約社員やパートタイマーには支給していない。
【問題とならない例】の2.は、「目標に対する責任」と「待遇上の不利益」の有無がポイントになっています。責任と裁量は一体となるものですが、契約社員やパートタイマーに目標を達成するための裁量を与えていない場合は、賞与を支給しなくても問題はないと考えられます。
平たく言うと、1週間もあれば覚えられるような定型業務で、人によって結果に大きな違いが生じなければ、賞与を支給しなくても構いません。仮に、個々の貢献度を評価しても、(既に職務遂行能力の違いは基本給に織り込み済みでそれ以上の)差を付けるのが難しいような場合です。
ところで、同一労働同一賃金については、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(パートタイム・有期雇用労働法)によって、次のように規定されています。
「事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。」
正社員と契約社員、パートタイマー等の基本給や賞与等の待遇について、それぞれの性質や目的に照らして、業務の内容、責任の程度、配置の変更の範囲、その他の事情を考慮して、不合理な相違を設けることが禁止されています。
最初に説明したガイドラインでは、業務の内容と責任の程度(=業績等に対する貢献)を重視した内容が示されていました。
しかし、実務上は、正社員と業務の内容や責任の程度が(一見)似ている契約社員、嘱託従業員、パートタイマー、アルバイト等に賞与を支給していない場合に、問題になりやすいです。
そして、裁判では、賞与をどのような趣旨・目的で支給しているのかを出発点として、「その他の事情」を重視した判断が下されることがあります。その他の事情として、最高裁の判決では、次の事項が挙げられていました。
- 長期雇用を前提として採用した者か(賞与を人材の確保や定着を図る目的で支給している場合)
- 正社員への登用制度があるか
- 定年後に再雇用した者か
詳しい内容(事件の経緯や判決の概要)は、下のページを参照してください。