退職後の傷病手当金の継続給付

退職後の傷病手当金の継続給付

会社を退職すると、健康保険の傷病手当金は支給されないのでしょうか?

在籍中に健康保険の傷病手当金を受給していて、条件を満たしている場合は、退職後も傷病手当金が継続して支給されます。

会社を退職して、再就職するまでは、次のいずれか方法によって、医療保険制度に加入しないといけません。

  1. 家族の被扶養者になる
  2. 任意継続被保険者になる
  3. 国民健康保険に加入する

傷病手当金は、従業員が私傷病で休業した場合に、賃金を補償するために支給されます。健康保険に加入している被保険者を対象にして支給される制度で、被扶養者や任意継続被保険者には支給されません。また、国民健康保険には、傷病手当金と同様の制度はありません。

したがって、退職後に生じた私傷病については、傷病手当金は支給されません。

しかし、健康保険法(第104条)に、「傷病手当金又は出産手当金の継続給付」の項目があって、次のように規定されています。

被保険者の資格を喪失した日の前日まで引き続き1年以上被保険者であった者であって、その資格を喪失した際に傷病手当金又は出産手当金の支給を受けているものは、被保険者として受けることができるはずであった期間、継続して同一の保険者からその給付を受けることができる。

要約すると、次の2つの条件を満たしている場合は、退職後も継続して傷病手当金が支給されることが定められています。

  1. 1年以上健康保険に加入している
  2. 退職日が傷病手当金の支給対象になっている

これは在籍中の健康保険から継続して支給されるもので、退職後に加入している医療保険制度は関係ありません。

1.については、説明は不要と思います。

2.について、傷病手当金が支給される条件を確認しましょう。傷病手当金は、次の3つの条件を全て満たしている場合に、4日目以降の休業期間(休業した日)を対象にして支給されます。

  1. 業務外の傷病のため就業できない
  2. 連続して3日以上休業した
  3. 休業期間について賃金が支払われない

したがって、休業して3日以内に退職した場合は、退職日は傷病手当金の支給対象ではありませんので、退職後に傷病手当金は支給されません。

また、休業して4日以降であっても、「最後の挨拶をしたい」といって、退職日に無理をして出勤するケースがありますが、退職日を出勤扱いとして処理をすると、退職日は傷病手当金の支給対象外になります。そうなると、退職後に傷病手当金は支給されません。

健康保険法上は、退職日の健康状態が継続しているとみなされますので、退職日が傷病手当金の支給対象になっているかどうかが重要になります。

そして、退職後に傷病手当金の継続給付を利用して、家族の被扶養者になることを予定している場合は、傷病手当金の支給額に注意をする必要があります。なお、傷病手当金の支給額(日額)は、「直近1年間の標準報酬月額の平均/30日×2/3」で計算します。

被扶養者になる場合は、130万円の年収要件が定められていますが、傷病手当金の日額が3,612円以上の場合は、130万円の年収要件を超えますので、傷病手当金を受給している期間は被扶養者になれません。

また、傷病手当金を受給している期間は、傷病のため就業できない状態ですので、雇用保険の失業給付は同時に受給できません。雇用保険の失業給付は、就職する意思及び能力があって、職業に就くことができない場合に支給されます。

更に、障害厚生年金や老齢厚生年金等を受給する場合は、傷病手当金は不支給又は減額調整されます。

出産手当金についても、健康保険法(第104条)で同様に定められていますので、条件を満たしている場合は、会社を退職した後も継続して給付を受けられます。