退職後の出産手当金の継続給付
退職後の出産手当金の継続給付
出産を予定している女性従業員から、退職に関して相談を受けました。退職しても、健康保険の出産手当金は支給されますか?
在籍中に健康保険の出産手当金を受給していて、条件を満たしている場合は、退職後も出産手当金が継続して支給されます。
健康保険法(第104条)に、「傷病手当金又は出産手当金の継続給付」の項目があって、次のように規定されています。
被保険者の資格を喪失した日の前日まで引き続き1年以上被保険者であった者であって、その資格を喪失した際に傷病手当金又は出産手当金の支給を受けているものは、被保険者として受けることができるはずであった期間、継続して同一の保険者からその給付を受けることができる。
要約すると、次の2つの条件を満たしている場合は、退職後も継続して出産手当金が支給されることが定められています。
- 1年以上健康保険に加入している
- 退職日が出産手当金の支給対象になっている
これは在籍中の健康保険から継続して支給されるもので、退職後に加入している医療保険制度は関係ありません。
1.については、説明は不要と思います。
2.について、出産手当金は、出産日の42日前(多胎妊娠の場合は98日前)から、出産日の56日後までの範囲内で、会社を休業した期間(休業した日)に対して支給されます。
この産前産後休業の期間内に退職していることが条件になっています。この期間が始まる前に退職していると、出産手当金は支給されません。
なお、出産日当日は「出産日の42日前」に数えます。また、「出産日の42日前」は出産予定日が基準になりますので、実際の出産が予定日より遅れても構いません。出産予定日の42日前より後の日に退職していれば、2.の条件を満たしていることになります。
ただし、「最後の挨拶をしたい」と言って、退職日に出勤するケースがありますが、退職日を出勤扱いとして処理をすると、退職日は出産手当金の支給対象外になります。そうなると、退職後に出産手当金は支給されません。
健康保険法上は、退職日の状態が継続しているとみなされますので、退職日が出産手当金の支給対象になっているかどうかが重要になります。
そして、退職後に出産手当金の継続給付を利用して、配偶者の被扶養者になることを予定している場合は、出産手当金の支給額に注意をする必要があります。なお、出産手当金の支給額(日額)は、「直近1年間の標準報酬月額の平均÷30日×2/3」で計算します。
被扶養者になる場合は、130万円の年収要件が定められていますが、出産手当金の日額が3,612円以上の場合は、130万円の年収要件を超えますので、出産手当金を受給している期間は被扶養者になれません。
参考に、標準報酬月額の平均が16万円とすると、出産手当金の日額は3,556円、標準報酬月額の平均が17万円とすると、出産手当金の日額は3,778円になります。
配偶者の被扶養者になれない場合は、任意継続被保険者になるか、国民健康保険に加入するか、どちらかの方法によって医療保険制度に加入しないといけません。どちらを選んでも、保険料の負担を伴います。
ところで、本人の退職の意思が強い場合は別ですが、退職しないで、産前産後休業及び育児休業を取得して、年金事務所等に休業の申出をすれば、休業期間は本人も会社も社会保険料の負担が免除されます。当然、出産手当金は支給されます。
その上、健康保険の出産手当金を受給した後の育児休業の期間は、雇用保険の育児休業給付が支給されますので、退職しない方が制度を有効に活用できます。費用負担が必要な状態から、給付金を受給できる状態に換わります。
傷病手当金についても、健康保険法(第104条)で同様に定められていますので、条件を満たしている場合は、会社を退職した後も継続して給付を受けられます。

執筆者:社会保険労務士 木下貴雄【 登録番号 第27020179号 】
就業規則を専門とする社会保険労務士です。中小零細企業の就業規則に関する悩みは全て解決いたします。日々の業務やホームページでは、分かりやすく伝えることを心掛けています。

